このブログは、podcast「人事・労務の豆知識」をもとに作成しています。
内容は配信当時の法律・報道などを基に、個人の見解を交えたものになっております。

📻 今回は、入社時の安全衛生教育についてです。現場関係でないような、危険がないような仕事の場合は、どのようなことが必要なのでしょうか?

今週は安全衛生教育についてお話しします。

安全衛生教育は、入社時に必ず行われるべきものとして定められています。事故が多いような建設業などの仕事では、これらがきちんと実践されていることが多いと思われます。

一方で、オフィスワークにおける安全衛生教育は、なにをすればいいの??と思うこともあるのではないでしょうか。

オフィスワークの会社も、入社時に安全衛生教育を実施しなければならないと規定されています。今日は特にオフィスワークに携わる方々向けの、入社時の安全衛生教育に焦点を当ててお話ししようと思います。

なぜ入社時の安全衛生教育が必要なのかというと、それは労働安全衛生規則によって定められているからです。

『労働安全衛生規則』 (雇入れ時等の教育)

第三十五条 事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。ただし、令第二条第三号に掲げる業種の事業場の労働者については、第一号から第四号までの事項についての教育を省略することができる。
一 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
二 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
三 作業手順に関すること。
四 作業開始時の点検に関すること。
五 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
六 整理、整頓とん及び清潔の保持に関すること。
七 事故時等における応急措置及び退避に関すること。
八 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

2 事業者は、前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。

要するに、会社が新しい従業員を採用した際には、適切な安全衛生教育を行う義務があるということです。
そして、一部の業種ではこの教育を省略できる場合がありますが、該当する業種は次の通りとなっています。

『労働安全衛生法施行令』 (総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)

第二条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第十条第一項の政令で定める規模の事業場においては、次に示す各号に掲げる業種の区分に応じ、常時該当する各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。
一 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 百人
二 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 三百人
三 その他の業種 千人

すなわち、「総括安全衛生管理者を選任すべき事業場」の区分に従って、「その他の業種」が省略可能な対象業種となっています。

令和六年四月に法改正が施行される予定で、この省略の規定が削除されるとされていますので、現段階ではまだ実施されていませんので、この点については今回は省略します。

特に一般のオフィスワーク、とくにパソコン作業を主とする業務においては、どのような安全衛生教育が必要かについて考えてみました。

五 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。

パソコンに向かって行う仕事で懸念される疾病とは、VDT作業症候群と呼ばれるものがあります。

ここで「VDT」とは、具体的にはディスプレイやキーボードなどを含むコンピューターの出力装置の一つであり、文字やグラフィック、動画などを表示する装置のことを指します。もちろん、パソコンも含まれますね。
その使用に際して、長時間作業を行う人々の中には、身体的及び精神的な疲労を感じるケースが多いとされ、これが労働衛生上の問題として指摘されています。
このため、VDT作業における労働衛生上の指針が厚生労働省からガイドラインとして出されています。 このガイドラインを基に、検討すると良いと思います。
作業者の疲労軽減を図るためには、目の疲れや肩こり、腰痛などを防ぐアプローチが重要ですね。 このような仕事をしていると、これらの問題が発生する可能性があるため、照明の調整やグレアの防止、騒音低減措置などの基準が定められています。
また、作業管理の観点から、心身の負担を減らすための作業時間の管理が求められています。具体的には、作業区分に従った一日の作業時間、一定の連続作業時間及び作業休止時間、無理のない業務量、作業に適したVDT機器の選択などです。企業はこれを基に設備を整える必要があります。 定期的な点検及び清掃も行い、改善措置も講じることが求められています。
さらに、健康障害の防止を図るために、作業者の健康状態を正しく把握しましょう。
このパソコンを使用した作業は、意外と体調を崩しやすいことが報告されています。
健康相談については、メンタルヘルスや健康上の不安、慢性疲労、ストレスによる症状、また自己管理の方法についての相談の機会を設けるよう努めることになっていますので、相談窓口の案内は安全教育の内容として適切であると考えられます。

厚生労働省 情報機器作業における労働衛生 管理のためのガイドライン

六 整理、整頓とん及び清潔の保持に関すること。

整理整頓をどのように行うか、机をいつ拭くか、雑巾はどこにあるのか、誰が拭くのかなど、実際に誰が行動を起こすかは非常に重要ですよね。
例えば、机を拭くという行動を考えてみましょう。それは実施しなければならないものでしょうが、自分の机だけはちゃんと拭いておくということでいいのでしょうか。もしくは、週に一回掃除の担当者が入るから、例えば土曜日にお掃除の日とするので、その時はちゃんときれいにして帰ってください、というような会社もあるかもしれません。
いろいろなパターンが考えられますので、会社ごとの決まりや、整理整頓をいつ行うべきか、日々の掃除をどのように行うべきかといったことは、入社時に教えておいてくださいということですよね。
・・・ごもっともです。
そう言われてみると、教育や研修を思いつつも実施している会社も多いのではないかと思います。 そして、次のポイントに移りますが、こちらも教育研修を無意識に実施している場合も多いのではないかと思います。

七 事故時等における応急措置及び退避に関すること。

例えば、オフィスで誰かが怪我をしたときに、どのような行動を取るべきかについては、皆が知っていなければなりません。
もし自分の目の届く範囲で誰かが具合が悪くなったり、怪我をしたりした場合、誰に知らせ、どのような手配をすればよいのか。
例えば、救急箱の場所について知る機会がなく、何かあったとき、「救急箱はどこにありますか?」と古株の人に聞いて初めて知る、ということもあるのではないでしょうか。
また、非常口の場所や避難経路の説明も重要ですね。

八 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

もし、会社において何か「これを伝えておいた方がよい」という、安全衛生に関わる重要な情報があれば、それをお伝えすることは重要ですよね。
意外に多いのが、床に散らばったコードで、これがつまずきの原因となります。そうした問題も存在するのではないでしょうか。
できる限り、整理整頓すべきですが、完全には避けられない事情もあります。
「ここが少し盛り上がっているので、気をつけてください」といった案内が必要な場合もあるでしょう。
私たちの事務所を例に取ると、建物が古いため、床にポップアップ式の電源が設置されています。非常に邪魔ではありますが、電源の取り口が不足しているため、仕方なく使用しています。
そのポイントを踏まないように、テープで巻いたり工夫はしていますが、どうしても避けられない状況もあります。
私は今回、入社時安全衛生教育の際に、「ここに引っかからないように気をつけてね」と伝えるべきだなあと思いました。 このような、会社ごとに異なる点や、「初めての人はうっかりするかもしれない」ポイントをまとめ、話ておくことは必要でしょう。

改めて考えてみると当然の話ばかり

「入社時安全衛生教育」とは、必ずしも堅苦しいものである必要はないと思います。
例えば、入社時に先輩社員が何気なく実施する社内ツアーを通じて、危険な場所や避難経路などの情報を教えることも可能です。そのような方法も、十分に安全性教育と考えることができると私は思います。
現在日常的に実施している内容をまとめて、安全性教育として体系化し、全員に伝えられる体制を整えることが必要ではないかと思います。

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