227.最近の判例の話と社労士試験の話
今回は、最近気になった判例の話と、質問箱にいただいた社労士資格と試験の話です。
最近気になった判例について
毎日暑いですね、熱中症とかは大丈夫でしょうか?
暑すぎて労災なども、本当に気をつけていただきたいと思います。
しっかりと調べてからまたお話ししようかと思うのですが、最近気になる判例が2つ出ていました。
1つ目の判例は経済産業省のトランスジェンダーの方が使用するお手洗いについての裁判となります。
Twitterで「自認している性別によってお手洗いを使いたい、と言われたら使わせなければいけないのか」など話題となっておりましたが、こちらは判決文をよく見ていただきたいです。
こちらに関しては決してそんなことはなく、「したがって、取扱いを一律に決定することは困難であり、 個々の事例に応じて判断していくことが必要になることは間違いない。」「なお、本判決は、トイレを含め、不特定又は多数の人々の使用が想定されている 公共施設の使用の在り方について触れるものではない。この問題は、機会を改めて 議論されるべきである。」(判決文より一部抜粋)など、判決文には個別の事情によるものだということが書いてあります。
気になる方はぜひ裁判所HPや弁護士の先生がしっかりと解説されているものがありますので、1度目を通していただきたいと思います。
気になる2つ目の判例は、自動車学校の同一労働同一賃金についての裁判について、最高裁によって原審差し戻しされたものです。
自動車学校で定年退職して再雇用された方が、お給料がものすごく下がったことに対して、同一労働同一賃金で訴えを起こしていました。
大まかに言うと、高裁では6割よりも下になったお給料については保障しようという判決となりました。
しかし最高裁では、基本給等の性質や支給目的についてこれまでの裁判で審理が尽くされていなかったとのことで、高裁へ差し戻しになったということです。
こちらはしっかりと見ないと解説できないぐらい、複雑な内容になっているみたいですね。
名古屋自動車学校事件-裁判所HPリンク
最近私は労働法のセミナーを結構させていただいていて、お役所などで一般の方向けのセミナーをさせていただくことが多くあります。
そういったセミナーで、皆さまから「えぇ!?」という反応をいただくのが、決まりごとは会社さんによって違うということについてですね。
労働基準法(以下、労基法)という最低基準の法律があって、それ以上のことに関しては会社さんが好きに決めてよいから、「前の会社はこうだったから、次の会社でもこうだ」ということはなく、それぞれ会社さんによって違うことがあってそれは労基法違反ではないとお話をします。
そうするとアンケートに「会社ごとに決まりごとが違うのだということを知った」「転職時などに、いままでの労働条件について当たり前だ思っていたことも次はなくなるかもしれないことついて、気にしなければいけない」などが書かれていました。
会社さんごとにいろいろなことが決まっているということ自体、働いている方にはあまり認識されていないということですよね。
そして先ほどお話ししていた自動車学校の同一労働同一賃金についての裁判が差し戻された理由は「基本給等の性質や支給目的について、審理が尽くされていなかったため」ということでしたが、会社さんごとにいろいろなことが決まっていることのレベルとしては、すごく高い内容になりますよね。
要するに「基本給等の中身について、どういった要素を含んでいで、なぜこの金額として設定されているのか?」ということです。
基本給等の決まり方について、年次・出来る仕事・責任の程度など、どの要素が入り決定されているのか会社さんにより異なります。
このように基本給という同じ名称であっても会社さんによってその内容が違うため、これを一社ずつ勘案するならば、結構大変なことだとこの判例の一報を見て思いました。
それでは引き続き質問箱にご質問をいただいておりますので、お答えしてまいります。
ご質問の内容
社労士としての需要などについて―市川が回答します!
ご質問ありがとうございます。
社労士は平均年齢が高くて、50代はそんなに上のほうのご年齢でもないですね。
むしろ30代や40代だと若手で行けるという業界です。
30代や40代だと貫禄がないので、50代や60代ぐらいで社労士になったほうが貫禄がありますよね。
社労士試験に合格して開業となると、ちょっと難しいというか、思っているほど簡単ではないというところになります。
まず社労士登録すると社労士会から仕事を振ってもらえると思ってる方がまれにいらっしゃるらしいですが、そういうことはないですね。
独立開業するということなので、一から営業してお客様を開拓していかなければならないです。
勉強をして社労士のお仕事がしたいと思っても、その前に営業とか事務所の経営をなんとかする、ということがあります。
今までの技術系のお仕事だと、知識を身につけできることを増やしていってステップアップされていたと思います。
社労士はどんなに勉強をして、何かをできるようになっても、それに応じて仕事が来るということはないというような世界です。
そのため、せっかく今まで技術系の管理職でいかれたのであれば、そのままいった方がよいのではないかと、正直私はご質問を拝見して思いました。
勉強することはすごくよいことだと思います。
社労士の資格を持っていると定年後に独立する方もいらっしゃいますし、社労士会を通じて社労士のお仕事をすることができるようになります。
こちらに関しては定年後でなく副業・兼業などでもよいですが、そういうこともあるので社労士のお仕事が出来ないわけではないと思いますね。
ご質問の需要の件について、需要はありますよ。
ただ、需要はあっても、営業をかけて取りに行かなければいけないということがあります。
需要はあるけれども、自分のお客様にできるかどうかはまた別のお話なので、そこができるかどうかはお考えになった方がよいのではないかなと思います。
あと社労士事務所に転職するというのは、たぶん思っていらっしゃるよりも難しくて、お給料がものすごく安くなりますから、それでもよいのであればという感じですね。
社労士事務所のお給料は安いです、これはもう業界の問題だと思います。
なんとかお給料を高くしていこうとしている先生もいらっしゃいますけど、だいたいそういう先生は総じて営業にちゃんと力を入れています。
そのため思い描いている社労士業ではなく、どちらかというと営業マンやコンサルティングみたいなかたちで、お客様にアプローチをしてサービスを提供して行く方向に力を入れているということです。
お給料を上げようとすると、そういう方向に力を入れざるを得ないですよね。
そのため社労士業として思い描いているお仕事をしていると、やはりどうしてもお給料は上げられないです。
こういったことから、転職する時にものすごくお給料が下がるのが大丈夫ならば、社労士事務所へ転職することはできるのかなとは思います。
あとは開業してご自身で頑張るということであれば、それもよいのではないでしょうか。
社労士はすごく面白い仕事ですし、勉強するのはとても楽しいですけれども、仕事にしようとすると結構なハードルがあります。
社労士試験に合格するハードルと社労士としてやっていくハードルはちょっと違いますので、社労士試験にチャレンジするというところだけでもよいのではないかとは思います。
2つ目のご質問
労働安全衛生法の勉強について―市川が回答します!
ご質問ありがとうございます。
私は労働安全衛生法(以下、安衛法)はですね、単語帳を作って暗記しましたね。
ご自身が今までの学生時代のお勉強で暗記科目をどのようにして勉強してきたかによって対処方法は違うと思います。
私はひたすら書く、単語帳を作って暇さえあれば読む、声に出して読みまくるという方法で覚えました。
ちなみに社労士試験では、もうひとつ考え方があります。
これはあまりお勧めはしませんし、やってはいけないと思いますが、労基法を完璧に取れば安衛法を落としても受かります。
労基法と安衛法はひとつのかたまりとして、選択式だと労基法3問・安衛法2問の合計5問、択一式だと労基法7問・安衛法3問の合計10問という形で出題、1問1点で計算されます。
そのうち7割くらいを取ればよいので、安衛法が0点だとしても、労基法が満点ならば大丈夫だと思い、私は直前までやらなかったということが実のところあります。
そして安衛法を実務で使うかどうかですが、これは結構使います。
テキストなどで、どこに何が書いてあったかという知識があれば、実務上は資料を見ながらできます。
あとお客様の前で間違えるわけにはいかないのと説明をしやすいので、お役所のパンフレットをご覧いただきながらお話しすることの方が多くなります。
そのため試験後は細かなことを覚えていなくても、どこに何が書かれているということさえ覚えていれば、実務ではそれで充分ですね。
ただ、試験は暗記科目として出題されますので、最後に1週間ぐらいがんばって詰め込んでいただければと思います。
私は安衛法よりも、どちらかいうと年金が本当に苦手でした。
安衛法は本当に暗記物なので、もう割り切るというのがおすすめです。
今週のPodcastでは
気になる2つの判例について、もっとたくさんお話ししております。
夏なので暑いですが、8月の終わりが社労士試験ですよね。
今まさに試験勉強中の方がいらっしゃると思いますので、頑張っていただきたいなと思います。
今週はここまでになります。
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