社会保険上の扶養について再確認してみませんか②

1.はじめに

こんにちは。荻窪のバラスト社会保険労務士法人の髙山です。

新年度が始まり、入社や異動などで家族構成や働き方に変化が生じやすいこの時期。今回は、実務でも誤解が多い「社会保険の扶養」について、基本から改めて確認してみたいと思います。

前回①はこちら


2.社会保険の「扶養」とは?

「扶養」というと税金の話を思い浮かべる方も多いですが、今回は社会保険、特に健康保険と年金保険における扶養制度についてお話しします。

社会保険上の扶養に該当すると、例えば以下のようなメリットがあります。

  • 被扶養者が保険料を支払うことなく健康保険に加入できる
  • 医療費の窓口負担が3割になるなどの給付を受けられる
  • 介護保険料や国民年金保険料の支払いが不要になる場合がある

こうしたメリットは、扶養に「入れる側(被保険者)」だけでなく「入る側(被扶養者)」にとっても非常に大きなものです。

ただし、これは申請して認定を受けることで初めて有効になります。つまり、黙っていては扶養にならない、という点が非常に重要です。


3.社会保険の扶養に入れるための要件

では、どのような条件を満たせば「社会保険の扶養」に入れるのでしょうか?主なポイントは以下の3つです。

① 対象者が親族であること

  • 原則、3親等以内の親族が対象です。
  • 配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹などが該当します。

② 所得(年収)要件を満たしていること

  • 年収130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)が基本ライン。
  • かつ、被保険者の収入の半分未満であること。
  • 同居か別居かによって「収入比較の対象」や「仕送りの有無」などが異なります。

③ 生計維持関係があること

  • 別居している場合:定期的な仕送りがあり、それで生活していることが必要。
  • 同居している場合:収入要件を満たしていれば比較的認定されやすい。

日本年金機構HP


4.よくある注意点と誤解

  • 「申請しなければ自動的に扶養になる」は誤り

被扶養者に該当していても、手続きをしなければ制度上は扶養と認められません

  • 収入の「見込み」で判断される

パートやアルバイトで収入が月々変動する場合でも、「今後1年間の見込み」で判定されます。

雇用契約書や過去の給与実績をもとに判断されるため、入社直後や収入が安定しない場合は注意が必要です。

  • 被扶養者異動届を忘れずに

収入増、就職、結婚・離婚、死亡など、家族状況が変わったときは速やかに「被扶養者異動届」の提出が必要です。


5.社会保険扶養の実務ポイント

  • 健康保険には扶養の制度があるが、国民健康保険にはない
  • ただし、厚生年金には扶養の制度がない(その代わり、配偶者は「第3号被保険者」として国民年金に加入できる)

6.まとめ

社会保険の扶養は、知っているかどうかで損得が大きく変わる制度です。

とりわけ人事・労務担当者にとっては、従業員の家族情報を正確に把握し、適切に扶養の判断をすることが求められます。

判断が難しいケース(同居/別居の要件や仕送りの実態など)も多々ありますので、不安があれば専門家への相談をおすすめいたします。

当法人でも扶養認定に関するご相談を承っておりますので、どうぞお気軽にご連絡ください。


杉並区荻窪を拠点に企業の成長を支える労務パートナーとして、貴社をサポート致します

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