私はときどきAmazonなどの通販を使うのですが、梱包のダンボール箱が無駄に大きいと思ったことはありませんか? 大きめの段ボール箱いっぱいに丸めた紙が緩衝材として詰め込まれていて、底にぽつねんと小さな商品がさびしく置かれている。
なぜ、こんな大きな箱を使うのだろうと思って、ネットで調べてみました。
理由は、
- 1)商品サイズに合う箱を探す手間が省ける
- 2)規格化すると箱の隙間が減って積みやすくなる
- 3)大きさが一定のためトラックの台数が把握しやすい など
まとめると「効率向上」ということになりそうです。
「物流業界の2024年問題」というのはお聞きになったことがあると思います。これはトラックドライバーの労働環境が悪いため、ドライバーが急減したことが発端となっています。ドライバーの労働時間は全産業平均の120%、年収は85%となっています(物流危機とフィジカルインターネット:経済産業省より試算)。これまでは自動車運転業務に時間外労働の上限規制はなかったのですが、労働環境改善のために、2024年度から上限規制がかけられることになりました(労使協定を結んだ場合、時間外上限960時間/年)。これを背景として、物流コストが高騰し、2030年には物流需要の36%が運べなくなるという試算もあります。
このような状況を「物流コストインフレ」と呼ぶのだそうです。2010年ころまでは、物流の需要<物流能力だったのですが、今後は、物流の需要>物流能力。すなわち、企業競争力は「製造・販売能力」ではなく、「物流の能力」が決定する時代になるというものです。
物流コストインフレには、「カーボンニュートラルの要請」という背景もあります。我が国のCO2の排出量の6.8%は貨物自動車によると算定されています(引用:同上)。物流は様々な理由によって制約されていく状況にあるのですね。
ではどうするか。「物流効率向上」しかありません。複数の企業が協調・連携して物流を行う「競争は商品で、物流は共同で」を合言葉に、梱包、表示の統一化等の様々な効率化の試みが進められています。将来的にはIoTやAIを活用して物資、倉庫、車両の空き情報を見える化して、規格化した梱包を複数企業がシェアしたネットワークで輸送するというシステムが構想されているのだそうです。
大きな段ボール箱一つについても深い背景があるんですね。