2025年の法改正、対応漏れはありませんか?今こそ振り返りのタイミング!~2025年の労働・社会保険分野の法改正まとめ~

2025年(令和7年)の労働・社会保険分野の法改正を振り返り、対応漏れ等がないか確認しましょう。
目次
- 1.はじめに
- 2.育期間標準報酬月額特例申出書の添付書類の省略(2025年1月1日から)
- 3.労働安全衛生関係手続の電子申請が義務化(2025年1月1日から)
- 4.雇用保険法等の一部が改正(2025年4月1日から)
- 5.育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化(2025年4月1日から)
- 6.育児介護休業法等の改正(2025年4月1日から)
- 7.65歳までの雇用確保措置が全企業必須に(2025年4月1日から)
- 8.法定雇用障害者の数を算出する際の除外率が引き下げ(2025年4月1日から)
- 9.熱中症対策の義務化(2025年6月1日から)
- 10.雇用保険「教育訓練休暇給付金」の創設(2025年10月1日から)
- 11.従来の健康保険証が令和6年12月2日に廃止(2025年12月2日から)
- 12.カスタマーハラスメントの対策義務化(※2026年10月1日から)
- 13.まとめ
1.はじめに
2025年(令和7年)は、労働・社会保険分野で多数の法改正がありました。
本コラムでは、企業の人事・労務担当者が押さえておくべき主な法改正をまとめました。 特に、育児・介護休業、雇用保険、定年延長、電子申請義務化、熱中症対策の義務化といったテーマは実務対応が求められます。
2.育期間標準報酬月額特例申出書の添付書類の省略(2025年1月1日から)
事業主確認欄「□確認済み」にチェックすることで、戸籍謄本や戸籍記載事項証明書の添付が省略可能になりました。
3.労働安全衛生関係手続の電子申請が義務化(2025年1月1日から)
以下のものが電子申請義務の対象になりました。
・労働者死傷病報告
・総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告
・定期健康診断結果報告
・心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告
・有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
・有機溶剤等健康診断結果報告 ・じん肺健康管理実施状況報告
出典:厚生労働省 労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます
電子申請にはe-Govが使用可能です。初めて利用する際は準備が必要になります。
特に、「労働者死傷病報告」は、報告しない場合に送検される事例が多いものとなっていますので、スムーズに対応できるよう準備しておくとよいでしょう。社労士に委託するのも有効な手段として考えられます。 もちろん、労災が発生しないよう常日頃から備えておくことが一番大切です。
4.雇用保険法等の一部が改正(2025年4月1日から)
次のとおり、雇用保険法の一部が改正されました。
・自己都合退職者が、教育訓練等を自ら受けた場合の給付制限解除
・就業促進手当の見直し(就業手当の廃止及び就業促進定着手当の給付上限引下げ)
・育児休業給付に係る保険料率引上げ(0.4%→0.5%)及び保険財政の状況に応じて保険料率引下げ(0.5%→0.4%)を可能とする弾力的な仕組みの導入
・教育訓練支援給付金の給付率引下げ(基本手当の80%→60%)及び当該暫定措置の令和8年度末までの継続
・雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、地域延長給付の暫定措置の令和8年度末までの継続
・「出生後休業支援給付」・「育児時短就業給付」の創設
・子ども・子育て支援特別会計の創設 ・高年齢雇用継続給付の給付率引下げ(15%→10%)
出典:厚生労働省 令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について
特に大きなものとしては「出生後休業支援給付」と「育児時短就業給付」の創設があり、報道等でも大きく取り上げられました。
2025年10月現在、上記給付金の創設に伴う各種給付金の申請数が激増しており、厚生労働省の各都道府県労働局から「申請処理に遅れが生じている」との発表がなされています。
詳細は各都道府県労働局のHPをご参照願います。
また、「自己都合退職者が、教育訓練等を自ら受けた場合の給付制限解除」については、従来、自己都合離職者の雇用保険の基本手当(失業給付)における原則の給付制期間は2か月となっていましたが、こちらが1か月に短縮されています。
5.育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化(2025年4月1日から)
次世代育成支援対策推進法の改正がありました。内容は次のとおりです。
①育児休業の取得状況の公表義務の対象拡大
常時雇用する労働者が1,000人超の事業主には男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられていましたが、これが300人超の事業主に拡大されました。
②育児休業の取得状況等に係る数値目標等の設定を事業主に義務付け
常時雇用労働者が100名を超える事業主に対して、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定時に、育児休業の取得状況等に係る状況把握・数値目標の設定が義務付けられました。
行動計画に盛り込むべき内容は多岐にわたるため、詳細は出典情報をご参照願います。 なお、常時雇用労働者が100名以下の事業主は努力義務とされています。
6.育児介護休業法等の改正(2025年4月1日から)
育児・介護休業法は改正がたくさんありました。2025年は4月と10月の2回に分かれて施行がされました。
施行に伴い就業規則の改定が必要となるものがあります。
また、育児だけでなく介護についても従業員への両立支援制度等の周知や制度利用の意向確認をすることが義務づけられました。
規程の改定や周知等の対応が済んでいない場合は早めの対応が必要です。
詳細は出典情報をご参照ください。
【2025年4月1日から】
・子の看護休暇の見直し
・所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
・短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク追加
・育児のためのテレワーク導入
・育児休業取得状況の公表義務適用拡大
・介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
・介護離職防止のための雇用環境整備
・介護離職防止のための個別の周知・意向確認等
・介護のためのテレワーク導入
【2025年10月1日から】
・柔軟な働き方を実現するための措置等 ・仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
7.65歳までの雇用確保措置が全企業必須に(2025年4月1日から)
2012年度までに、労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主は、継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることができましたが、2025年4月1日以降、全企業は以下のいずれかの措置を講じる必要が出てきました。
・定年制の廃止
・65歳までの定年の引き上げ
・希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入
8.法定雇用障害者の数を算出する際の除外率が引き下げ(2025年4月1日から)
障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、雇用する労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数を控除する制度(障害者の雇用義務を軽減)があります。除外率が、各除外率設定業種ごとにそれぞれ10ポイント引き下げられることになりました(現在除外率が10%以下の業種については除外率制度の対象外)。
出典:厚生労働省 障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について
9.熱中症対策の義務化(2025年6月1日から)
企業における熱中症対策が法令で義務化され、熱中症による健康障害のリスクがある作業について、必ず対策を講じなければならなくなりました。
既に、2025年内だけでも体制不備による是正勧告や資格(指名)停止処分が発生しています。 熱中症の発生件数は増加傾向にあり、死亡者数も高止まりしています。違反には罰則が設けられていることからも、しっかりと対策を講じることが求められます。
10.雇用保険「教育訓練休暇給付金」の創設(2025年10月1日から)
雇用保険被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、基本手当に相当する給付として、賃金の一定割合を支給する教育訓練休暇給付金が創設されます。
11.従来の健康保険証が令和6年12月2日に廃止(2025年12月2日から)
令和7年12月1日までにマイナ保険証か資格確認書への切り換えが必要です。
なお、【資格確認書の送付対象者】に対しては、2025年7月下旬から10月下旬にかけて、被保険者の自宅へ資格確認書(黄色のプラスチックカード)が送付されます。
【資格確認書の送付対象者】
従前の健康保険証をお持ちの方(2024年11月29日までに新規に資格取得(扶養認定)の決定をされた方)であって、2025年4月30日時点でマイナ保険証をお持ちでない方
12.カスタマーハラスメントの対策義務化(※2026年10月1日から)
2025年6月、企業に求められるハラスメント対策が強化されました。これまでもあったパワハラ・セクハラ・マタハラ対策に加え、新しくカスタマーハラスメントへの対応が企業の法的責務として位置づけられ、また、求職者やインターンに対するセクハラ防止措置も新たに義務化されました。
出典:厚生労働省 ハラスメント対策・女性活躍推進に関する改正ポイントのご案内
なお、国に先駆けて条例による施行を進めている自治体もあるため、よく確認することが求められます。
出典:一般財団法人地方自治研究機構 カスタマーハラスメントの防止を目的とする条例
※「2026年10月1日から」については、「第87回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」において示された方針に基づいています。
出典:厚生労働省 第87回労働政策審議会雇用環境・均等分科会 資料6 改正法の施行期日について
13.まとめ
2025年も目まぐるしい社会情勢の変化に対応するため、多くの法改正がありました。
対応に当たって、就業規則の改定などが必要になることもあります。
また、カスタマーハラスメント対策のように、国に先駆けて自治体が先に施行するケースもあります。
法令に漏れなく対応できているか不安だという場合は、ぜひ、弊社までご相談いただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
杉並区荻窪・千葉県流山市を拠点に企業の成長を支える労務パートナーとして、貴社をサポート致します!


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執筆
髙山 暁
前職は速記士として活動。保険知識の不足を実感したことと、経営者・労働者が気を配りにくい部分を支えたいと思ったことから、社労士を志し、2021年社労士試験に合格。2024年にバラスト社会保険労務士法人へ入社し、社会保険手続きや日常的な労務対応を数多く担当。初めて顧問先のお手続きを完了した経験を糧に、誠実かつ穏やかな対応で信頼を得ている。



