社員を新たに雇用するときには、給与だけでなく、社会保険料や労働保険料などの会社負担が発生します。特に、健康保険が協会けんぽであり、かつ社員の年齢が40~64歳で介護保険の適用を受ける場合は、健康保険料がやや高めに設定される点がポイントです。今回は、年収400万円の社員を1名雇用したケースを想定し、どのくらいの会社負担が必要になるのかを大まかに試算してみます。

■ 社会保険と労働保険、それぞれの会社負担とは?

会社が負担する保険料には大きく分けて以下があります。

  • 社会保険(健康保険・介護保険+厚生年金+子ども・子育て拠出金 など)
  • 労働保険(雇用保険+労災保険)

社会保険のうち、健康保険と厚生年金は「会社と社員が折半」する仕組みです。一方、子ども・子育て拠出金は「会社のみが負担」、労災保険も「全額会社負担」となります。雇用保険は会社負担分と社員負担分に分かれており、それぞれ料率が異なるので注意が必要です。

■ 1. 健康保険料(介護保険含む)と子ども・子育て拠出金

● 健康保険料(協会けんぽ・40~64歳介護保険対象)

保険料率(会社+社員合計):東京都の場合、おおむね10%前後(年度によって変わります

会社負担:その約半分 → 約5.0~5.1%

40歳以上になると介護保険料が加わるため、40歳未満よりも保険料率が高くなります。年収400万円で概算すると、以下のイメージです。

400万円 × 5.0% ≈ 20万円

厳密には月々の「標準報酬月額」や「賞与支給額」に基づいて保険料が算定されるため、実際には多少前後します。

● 子ども・子育て拠出金

子ども・子育て拠出金は以前の「児童手当拠出金」にあたり、給与総額に対して0.36%程度(年度により多少変動)の料率が課されます。これは社会保険の一部として扱われ、会社のみが負担します。

400万円 × 0.36% ≈ 1.44万円

■ 2. 厚生年金保険料

厚生年金保険は、健康保険と同様に会社と社員で折半します。2025年前後の保険料率はおおむね18.3%前後で、会社負担・社員負担はそれぞれ約9.15%程度です。

400万円 × 9.15% ≈ 36.6万円

これも健康保険同様、標準報酬月額や賞与額によって実際の金額は変動しますが、概算としてはこの程度を見込んでおきましょう。

■ 3. 労働保険(雇用保険+労災保険)の会社負担

● 雇用保険

雇用保険料は事業所の種類や年度によって変わりますが、2023年度では一般の事業の場合1.55%(社員0.6%+会社0.95%)となっています。つまり、会社は0.95%を負担します。

400万円 × 0.95% ≈ 3.8万円

年度が変わるタイミングで料率が見直されることがあるため、最新情報を随時チェックしましょう。

● 労災保険

労災保険は事業内容によって料率が異なります。一般的なオフィス業務が中心の事業所であれば、0.3%ほどが目安です。全額会社負担のため、年収400万円なら約1.2万円程度となります。

400万円 × 0.3% ≈ 1.2万円

■ 4. 会社負担の合計イメージ

ここまでの項目を合計してみます。なお、いずれの料率もおおまかな数値であり、正確な計算には標準報酬月額表や実際の給与体系を用いる必要がある点にご注意ください。

健康保険料(介護保険含む):約20万円(5.0%)

厚生年金保険料:約36.6万円(9.15%)

子ども・子育て拠出金:約1.44万円(0.36%)

雇用保険:約3.8万円(0.95%)

労災保険:約1.2万円(0.3%)

合計:約63万円

(※ ここでは各数値を概算しているので、実際は数千円~数万円の差が生じる場合があります)

● トータルコストの目安

年収400万円の社員1名に対して、会社は給与以外に約63万円前後を負担するイメージとなり、合計コストは約463万円です。料率や報酬月額の細かい区分によって多少前後しますが、ざっくり「年収の15~16%程度」を会社が追加で見ておく必要があると考えておくとよいでしょう。

■ 5. 採用時に検討すべきその他の費用

人件費には、上記の社会保険・労働保険料だけでなく、以下のような費用も含めて考慮する必要があります。

通勤手当や各種手当:給与以外にも交通費や役職手当などがある場合、それらも保険料算定の対象となる場合があります。

  • 福利厚生費:健康診断、レクリエーション、社内イベント、外部研修費用など、企業が従業員に対して提供するサービスも人件費として見込んでおきましょう。
  • 採用コスト:求人広告や人材紹介会社への支払など、最初にかかる費用も大きくなることがあります。
  • 教育研修費:新入社員の研修やスキルアップのためのセミナー費用、資格取得支援など、業務内容によってはかなりのウェイトを占めることがあります。

こうした費用も含めると、実質的な人件費は年収の1.15倍~1.2倍になることも珍しくありません。余裕をもった予算設計を行うことが大切です。

■ まとめ:年収400万円なら会社負担は約63万円、合計約463万円それに交通費など。

健康保険(介護保険含む)+厚生年金:年収の14%前後

雇用保険+労災保険+子ども・子育て拠出金:年収の1.9%前後

合計で約16%前後(約63万円)

給与と合わせると、年約463万円程度

今回は「介護保険適用年齢の社員」「協会けんぽ東京支部」「一般的な事務中心事業所」という前提で試算しましたが、実際の保険料率や事業内容により数字は前後します。また、労働保険料率は年度ごとに改定される可能性があるため、最新の料率を必ず確認しましょう。

子ども・子育て拠出金は社会保険の一部として会社のみが負担すること、雇用保険と労災保険は労働保険であることなど、区分を正しく理解しておくと、後々の計算や経理処理がスムーズになります。会社の成長に欠かせない人材を採用・育成するにあたって、こうした保険料の概算を早い段階で把握し、適切な予算を確保しておくことが重要です。

(この記事の内容は、あくまで概算の目安です。正確な試算や最新の保険料率については、各保険の公式情報や専門家にご確認ください。)

このような、トータルの人件費に関する相談などもお受けできます。お気軽にご相談ください。

Social Share Buttons