会社として、社会保険料の仕組みを正しく理解することは、とても重要です。保険料が適切に算定されていない場合、従業員の将来の年金給付額にも影響します。本記事では、社会保険料の決定方法や見直しが必要なタイミングなどをご案内します。


1. 社会保険料の基本的な仕組み

社会保険料は、従業員の給与をもとに計算・決定され、会社と従業員が折半して負担します。

保険の種類主な用途
健康保険料医療費の負担軽減、出産手当金・傷病手当金の給付
介護保険料(40歳以上)介護サービスの財源(介護施設利用、訪問介護など)
厚生年金保険料老後の年金給付、障害年金、遺族年金の支給

(そのほかに給与から法定控除される労働保険料として、雇用保険料(失業手当・育児休業給付などの用途)がありますが、本記事では説明を割愛します)


2. 標準報酬月額の決定、見直しタイミングと注意したいポイント

「標準報酬月額」とは、社会保険料を決定する基準となる金額です。これは、基本給だけでなく各種手当を含めた月額給与(報酬月額)を、一定の幅ごとに区分された「等級」に当てはめて決定されます。(実際の保険料額は、健康保険・介護保険・厚生年金保険、それぞれの料率を乗じて決定されます)

等級とは?

  • 健康保険:1等級(最低)〜50等級(最高)
  • 厚生年金:1等級(最低)〜32等級(最高)                 

例えば、月収が30万円の場合、健康保険は22等級、厚生年金は19等級に該当します(「協会けんぽ」 令和7年度・東京の場合)。 等級がアップすると、それに応じて標準報酬月額も上がり、社会保険料の負担額が増えます。

標準報酬月額は、以下のタイミングで決定・変更されます

  • 新規適用(従業員が新たに社会保険へ加入):社会保険適用対象である従業員を新たに雇用した際、その時点の給与をもとに等級と標準報酬月額が決定されます。短時間就労者(短時間労働者)も対象となるケースがあるため、適用基準は確認しておきましょう。

参考サイト:適用事業所と被保険者|日本年金機構

  • 算定基礎(定時決定): 4月〜6月の給与をもとに、毎年7月に標準報酬月額を決定して、9月から新たな保険料を適用する必要があります。たとえば、6月に普段より多く残業すると標準報酬月額が上がり、9月から1年間の保険料が増えたりする、ということがありますね。
  • 随時改定(月額変更): 昇給・降給などで月額給与の変動幅が「2等級以上」の場合、3カ月後から標準報酬月額を改定する必要があります。たとえば、課長への昇格に伴って月額給与が2等級以上アップすると、社会保険料も増える、ということです。

ご参考までに、1等級の幅は2万円、1等級上がると従業員保険料は月額3千円程度アップします。(月収21万から37万の場合。さらに上位の等級では月額4.5千円以上アップします)

参考サイト:健康保険・厚生年金保険の保険料額表(協会けんぽ 東京 令和7年度)

以上のような月額給与変動ケースに加えて、従業員の労働時間変更(たとえば、フルタイム勤務から短時間労働へ変更)して月額給与が下がった場合、標準報酬月額もダウンして社会保険料も減ることもあります。あるいは、労働時間減少に伴って社会保険の被保険者加入要件を満たさなくなると、健康保険・厚生年金から外れることとなります。


3. 会社の納付義務

会社は、社会保険料を毎月納付する義務があります。従業員給与から天引きするだけでなく、会社は折半分を負担し、翌月末までに納付する必要があります。たとえば、1月の給与から控除した社会保険料は、2月末までに納付しなければなりません。(納付方法として、「口座振替」や「金融機関での納付」がありますが、口座振替を利用する方が多いようですね)


最後に...手続きの遅れやミスに注意しましょう

算定基礎や随時改定手続きに怠りや誤りがあると、保険料未納や誤徴収につながりかねません。例えば、昇給していたのに随時改定(月額変更)を行わなかった場合、引き上げるべき保険料を少なく控除していることとなり、後日遡って追加徴収が必要となります。 例えば、上記例の場合、

  • 1等級違いによる従業員保険料は月額3千円 → 事業主と合算して月額6千円
  • 月額変更手続きモレの従業員が5人いた場合 → 月額計3万円

このように、会社の負担も大きくなり、対象従業員の困惑も招きかねません。標準報酬月額に含める月額給与の計算、控除する保険料額の算出など、十分ご注意くださいね。 (ミスに気付いた際は、速やかに管轄年金事務所へ連絡し、訂正手順などのガイドを受けましょう)

まとめ

社会保険料は、医療制度を支え、公的年金などの将来の給付につながる大切な制度です。従業員を雇用した際は忘れずに加入手続きをする。また、標準報酬月額を変更すべきケースを理解し、適切なタイミングに手続きして、従業員の安心につなげてください。社会保険の手続きや計算方法で不明点がある場合は、社労士など専門家に相談することをおすすめします。 東京都杉並区荻窪をオフィスとするバラスト社会保険労務士法人は、総勢10名以上が在籍するチームワークの良い事務所です。貴社の課題など、ぜひ1度お気軽にご相談ください。(鵜頭)

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