233.裁量労働制の法改正2

233.裁量労働制の法改正2-人事・労務の豆知識 Podcast

来年4月施行の法改正の内容をご紹介します。
今週は、企画業務型裁量労働制についてお話ししました。

企画業務型裁量労働制とは?今週のテーマと先週のおさらい

今週は先週に引き続き裁量労働制の改正についてお話しをしていきたいと思います。
先週は専門業務型裁量労働制の解説でした、今週は企画業務型裁量労働制を中心にお話をしていきます。

企画業務型裁量労働制とは、下記の資料に解説されている制度です。

企画業務型裁量労働制(第38条の4)より一部引用―愛媛労働局HP

まずは先週のおさらいをします。
2024年4月1日に裁量労働制についての改正が施行されるということで、裁量労働制である「専門業務型」と「企画業務型」の各々につき対応が必要になるということでした。
その中で専門業務型裁量労働制については、ご本人の同意を得る必要があるということが追加されました。
そして専門業務型裁量労働制を導入できるのは、現在は法令等で定められた19業務、2024年4月1日からはひとつ増えて20業務に限られるものであるということなどを解説しました。(※ひとつ増えるのはM&Aアドバイザリー業務になります。)
詳しくは先週の分をご覧ください→  Podcast / ブログ

「専門業務型」と「企画業務型」の裁量労働時間制は、みなし労働時間制として労働基準法において第38条の2~4に該当する業務についてみなした時間分働いたものとされる制度が定められています。

『労働時間制度の概要等について』P10~11より引用-厚生労働省HP

これらは業務遂行に必要とされる時間などを労働時間とみなして算定することになるので、実働時間で労働時間を算定する通常の制度とは異なるものになります。

『労働時間制度の概要等について』P6より一部引用-厚生労働省HP

このように「専門業務型」と「企画業務型」の裁量労働制については、会社さんがお仕事の進め方や時間配分に関して具体的な指示をせず、その裁量をご本人にお任せする制度です。
一般的に「みなし残業制」などと呼ばれる「固定残業制」は、一定の範囲内の割増賃金を定額で基本給と共に支給する制度で、裁量労働制とは全くの別物になります。

『労働条件をめぐる悩みや不安・疑問は 0120-811-610 はい!ろうどう労働条件相談ほっとラインへ』P3より一部引用―兵庫労働局HP

企画業務型裁量労働制の内容と改正について

企画業務型裁量労働制については先週お話ししました専門業務型裁量労働制とは異なり、対象業務が限定列挙されているものではありません。
それではどのような業務が企画業務型裁量労働制の対象となるのでしょうか。
名称が「企画業務型」であるがゆえ、企画職であればこの制度を使うことができると誤解されている場合が多くありますが、そうとは限りませんのでお気をつけください。
企画業務型裁量労働制に「該当する業務」と「該当しない業務」の例が下記の資料に示されております。

『企画業務型裁量労働制』P5~7より一部引用-厚生労働省HP

私は15年ぐらい前に勤めていた会社の企画業務型裁量労働制の対象労働者として働いていました。
そのときは人事で採用担当の仕事をしていて、今から考えると企画業務型裁量労働制として扱うのは告示の対象労働者の内容を踏まえても無理なのだと思いますが、経営企画部に所属して採用にもある程度口を出せるような立場ではありましたね。
このように非常によくない使い方をすることができてしまうということで、それをさせないように制度導入の仕組みが決まっています。
まず企画業務型裁量労働制の制度導入には労使委員会を設置しなければなりません。

『企画業務型裁量労働制』よりP3~4より一部引用、一部編集-厚生労働省

上記STEP3の運営のルール労使委員会の運営規定となります。
2024年4月1日以降は改正により、企画型裁量労働制を導入する全ての事業場について運営規定に下記3つの事項を定める必要があります。

・使用者が労使委員会に賃金・評価制度を説明をする事項
・企画業務型裁量労働制の制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項
・労使委員会は6か月以内ごとに1回開催する事とする事項

これら3つの事項を運営規定に追加した後、企画業務型裁量労働制を導入・適用するまで(継続導入する事業場では2024年3月29日(金)まで)に 下記の太線部分を含めた内容の決議届を労働基準監督署へ提出します。(※太字部分が改正箇所です。)

『事業主の皆さまへ 裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です』P2より一部引用―厚生労働省HP

「⑥労働者ご本人の同意」と⑦「制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取り扱いをしないこと」については「専門業務型」と「企画業務型」裁量労働制でそれぞれ改正点に違いがあります。
⑥と⑦は「専門業務型」は改正により追加された項目、「企画業務型」ではもともと存在していた項目になります。

労使委員会の運営規程の改正事項と注意点

先ほど2024年4月1日改正以降の運営につき、労使委員会の運営規定に追加で定める3つの事項をご紹介しましたが、もう少し詳しくご説明いたします。
運営規定に追加で定める3つの事項について、下記の資料をご覧ください。

『事業主の皆さまへ 裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です』P1より一部引用―厚生労働省HP

上記に「②労使委員会に賃金・評価制度を説明する」とありますが、具体的にどのような項目になるのか、下記の厚生労働省のQ&Aに記載があります。

『令和5年改正労働基準法施行規則等に係る 裁量労働制に関するQ&A』P13~14より一部引用―厚生労働省HP

いままでの企画業務型裁量労働制の労使委員会の決議では、対象労働者の方の労働時間について行き過ぎていないかというようなところを話し合っていることが多かったのですが、今回の改正では賃金水準や実際に特別手当を出しているのか、対象労働者の方々が働いた評価というのを開示する必要がありますよということになりますね。
あとは対象労働者の方にどのぐらいの業務量があり、業務についての裁量を持っているかということを調査して、その結果について労使委員会で話し合うことを6か月以内に1回ぐらいはしましょうということだと思います。

このように企画業務型裁量労働制については導入のハードルが高く、労使委員会をしっかりと運営しなければならないとか、そもそも実際に対象労働者の方が限られていますよね。
大きい会社さんであれが経営チームのような組織があって、その中に企画業務型裁量労働制で働いている方々がいるのかもしれません。
小さめの会社さんだと、経営に関する策定を行う方は従業員さんの立場でそんなにいないのではないかと思います。
そのため役員さんだけで話し合って事業運営を決めている会社さんが多いでしょうし、そうではなかったとしても、企画部の部長さんとかで実際に企画業務型裁量労働制を適用できるような業務をしている方は既に管理監督者の立場にいたりすることが多いような気がするので、あえて企画業務型裁量労働制を導入している会社さんは少ないのでしょうし、そんなに見たことがないですね。
小さめの会社さんでも制度導入が無いこともないのですが、企画業務型裁量労働制の導入を検討するというのは、かなり大きな会社さんでしっかりされているところが多いと思います。
弊社のような10人にも満たないような会社で、企画業務型裁量労働制になるような従業員が1人いるかといえばいないですし、経営についてはもうずっと私が決めているということなります。
従業員さんが100人ぐらいまでは無いのではないかなと思いますね。
そのため企画業務型裁量労働制の導入を勧める機会もあまりなく、導入しているところを見ることもそんなにはありません。
ここまでお話ししたように、導入されているところは来年の改正でいろいろと対応しなければならないことが増えたりするということです。

あとは「④労使委員会は6か月以内ごとに1回開催する」とありますね。

『事業主の皆さまへ 裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です』P1より一部引用―厚生労働省HP

こちらは例えば労使委員会の開催が4月1日にあったとして、その年の10月1日に間に開催が合わなかったので10月3日開催になってしまいました、というのはだめなので注意が必要です。
4月1日の6か月以内は10月1日までになりますので、そこは気をつけなければいけないですよね。
労使委員会開催の頻度というものは6か月に1回ならばよいと考えるのではなく、ちょっと早目に考えておいて、いっそのこと4か月に1回とか5か月に1回労使委員会を開催をするというようにしても問題はありません。
ここまでが労使委員会の運営規定に関する事項の詳しい解説となります。

最後に労働基準監督署への定期報告の頻度について、当分の間6か月以内ごとに1回と読み替えられていましたが、こちらは6か月以内に1回、その後1年以内ごとに1回に変わります。

『事業主の皆さまへ 裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です』P1より一部引用―厚生労働省HP

企画業務型裁量労働については、会社さんが運営しやすく忘れないよう労使委員会の決議や定期報告をするのがよいのではないかと思います。

恵社労士事務所は今月で名前が変わります。
10月1日からは、バラスト社会保険労務士法人という名前で心機一転やっていきたいと思っております。
事業内容は変わりませんので、労務相談・事務手続き・給与計算を得意としております。
あとは就業規則作成や専門業務型裁量労働制などの導入も結構得意ですので、ぜひご相談くださいませ。

233.裁量労働制の法改正2-人事・労務の豆知識 Podcast

今週はここまでになります。

恵社労士事務所のご相談窓口について

恵社労士事務所は労務相談・事務手続・給料計算を得意としている社労士事務所でございます。
確定拠出年金のご相談も承っております。

社労士をお探しの方はぜひ一度お問い合わせください。

今週も、ぜひお聞きください!

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