226.「就業規則」のお仕事

226.「就業規則」のお仕事-人事・労務の豆知識 Podcast

今回は、「就業規則」の仕事についてお話いたしました。
就業規則作成は難しいけど面白いです。

ご質問の内容

イチカワメグミ@恵社労士事務所ーPeing質問箱

就業規則のお仕事」について―市川が回答します!

就業規則作成の方針について

ご質問ありがとうございます。
ご質問者様は社労士試験に合格されて、開業に向けて事務指定講習を受講中ということですね。
就業規則については、社労士の仕事としてはメジャーな割に、その作り方を一切教えてもらわず社労士になります。
社労士試験は法律知識等を問われるもので、就業規則で絶対に書かなければならない絶対的明示事項等は勉強します。
しかし就業規則について実務上で気をつけなければならないポイントなどにはあまり触れません。
就業規則は統一されている書式などが特にないので、作成する社労士の思いや勉強している方向性みたいなものが如実に出るお仕事になりますね。
就業規則を初めて作る時に、作成者が何の勉強されたのかによって全容が決まってしまうところがあるのではないかと思います。

私の場合はどうだったのかというと、最初に勤務社労士として勤めていた事務所で、元々ある就業規則をチェック・修正してほしいというご依頼がありました。
そちらについては元々のものがあるので、そこから法改正の部分や、就業規則作成当時の感覚と今の感覚の違いなどを修正しましたね。
このように元になる会社の就業規則があり、リーガルチェックと時代に合わせたいというニーズもあります。
ただ就業規則は、0から1を作るときが面白いし楽ですね。
そのため「就業規則のひな形を用意したので、これを修正してもらいたいです」とおっしゃる場合がありますが、正直なところ弊社のひな形で作る方が楽なので、料金は変えられないというのが最近の方針になります。

就業規則の勉強方法

就業規則の勉強に関しては、とにかく1個作ってみるというのが一番よいのではないかと思います。
お客様から作成のご依頼をいただければもちろん一番よいですけれども、それが無いならば、今後ご自身で人を雇うときに「こういう就業規則を作るとよいかな」と考えながら作っていくとよいのではないでしょうか
そのときに役立つおすすめの教材については、後ほどご紹介します。

就業規則とは?

就業規則はどういったもので、どうして存在するのか?
まず、どういったものか?というと、就業規則=組織内の集団的な契約内容ですね。
例えば携帯電話の契約をするとき、契約について「簡単な内容の用紙」と「細かい内容の分厚い冊子」がありますよね。
これを労働契約に言い換えると下記のようなイメージとなります。

「簡単な内容の用紙」=労働条件通知書(個別適用)
「細かい内容の分厚い冊子」=就業規則 (集団適用)

就業規則の内容以上のことを、労働条件通知書などで個別に契約するということもあります。
就業規則というものは通常のきまりごとの他に、何かがあった時にはそれに基づいて処理をする、そのために存在します。
起こりうる様々なリスクを考えて、就業規則の内容に細かく落とし込んでいくことが必要ですね。

モデル就業規則の活用について

実際に就業規則を作成するにあたり、まずはご依頼の会社さんがどのような規則にしたいのか?ということを切り分けて考えていったほうがよいですね。
そのため形式的なひな形よりも、まず会社さんのお話を聞いて就業規則を作る理由やどのような方向性なのかを理解することが一番重要になります。

就業規則を作る理由については

・法律で義務付けられている、常時10人以上となったため
・会社としての方向性を就業規則にまとめたい
・問題発生があって就業規則に不備があると気づき修正したい


このように組織よって積極性なども様々ですので、就業規則を作る理由やお気持ちに合わせてお話をしていくことも重要だと思います。

具体的な就業規則の勉強で一番良い無料のテキストがありまして、それは厚生労働省作成の『モデル就業規則』(厚生労働省HPリンク)になります。
『モデル就業規則』は厚生労働省のひな形で、これを印刷したらそのまま使えるようなものだと思いがちですが、そうではありません。
こちら(厚生労働省HPリンク)をぜひ一度開いてみていただきたいです。
就業規則全文の項目の間に、その規則を作る理由や必要性などの解説が書かれています。
ただしこの解説されている内容はすごく難しいですね。
『モデル就業規則』を全部読んで理解をして、しっかりと就業規則を作成できるのであれば、社労士に依頼する必要はないのではないかというぐらいの内容になっています。
しかしそれを全てするには膨大な時間が必要です。
そのため忙しい社長さんはなかなかできずに、人事の方によろしくと指示をしたらそれなりのものが作れるかもしれませんが、おそらく1か月や2か月、丸々かかるのではないかなと思います。
人事の方が他の仕事と並行すればもっと時間がかかります。
それを考えると『モデル就業規則』をひな形で使うとしても、やはりある程度その内容がわかっている社労士に依頼した方が絶対によいですよね。

そして就業規則を勉強する側の社労士としては、『モデル就業規則』はすごく勉強になるので、こちらを読みながら1回自分の会社を想定して就業規則を作ってみるのがよいのではないかと思います。
あとは、業種によって様々なパターンの就業規則を作成してみることですね。
例えば複数店舗がある飲食店さんであれば、シフト制でいろいろなパターンが必要だったり、所定労働時間がいくつもあったりします。
その他にも労働時間について、フレックスタイム制を採用するならばどうするのか?など、様々な業種について考えて作ってみると勉強になりますよね。
簡単なものでもよいので1回作ってみると、いろいろなパターンの労働時間の組み立てなどの就業規則を作成する要素がわかってくると思います。

就業規則のコンサルティングで社労士としての付加価値を高める

就業規則をお客様としっかりと対話をしながら作ることができるとなると、それはもうコンサルティングになりますよね。
ただの書面としての就業規則、ひな形の空欄を埋めるようなアンケート(出退勤時間・所定労働日数・年間休日等)を取ってそれを入れ込んでありきたりなものとして作成することも、正直できたりします。
ありきたりなものも、問題なく不足のない就業規則であればよいですし、難しくないと思います。
ただアンケートを取って働き方をヒアリングすると、会社さんとしてはそれが悪いとはカケラも思っていなかったけれども、本当はだめだという内容がいっぱい出てきます。
例えば「9時から18時の8時間の出勤となっている中で2人だけ自由に出勤している方がいる」とか「本来であれば管理監督者とはならない管理職の方に役職手当を付けて残業代を支給しない」などの内容がヒアリングで出てきたときに、「これらの内容はだめです」と伝えてそこで終わりにするのは、私はよくないと思います。
このようにヒアリングする中で掘り起こされた問題について、組織が抱えているリスクなどを説明しながら就業規則等をどう変えていくとよいのかというお話ができるようになると、社労士としての価値が上がっていくのではないでしょうか。
しっかりとしたコンサルティングをしながら就業規則を作成すると、結構な報酬をいただかないと売り上げが本当に大変なことになるお仕事になります。
就業規則について押さえるポイントをお客様に話せるようになるためには、いろいろなケースを知らなければなりません。
そのため就業規則は、実地でお客様のお話を聞きながら作成して、それを何個も積み重ねるのが一番勉強になるのではないかなと思います。

開業後に初めて作成した就業規則

私が開業して1社目に作った就業規則のお客様は、今も顧問先でいらっしゃいます。
最初に気合いを入れ過ぎて「就業規則を使って会社さんを良くするべき」という私の気持ちがすべて表れた文章で、すごく修正しにくいものになっており後悔しています。
こちら法的な内容については問題ないのですが、文章をわかりやすくしようと思って平易な表現に言い換えたりしたため、法改正などで加筆修正するときに表現を合わせて易しく直さなければならなくて、これはあまりよくなかったと思います。
結局のところ就業規則をどんなに読みやすくしても、従業員の方はそんなには読まないですよね。
そのため、文章をわかりやすくする必要はあまりなかったです。
就業規則は性質上わかりにくい文章だとしても、作成したら公開して従業員さんが読みたいときに読める状態になっている、すなわち周知をするということが大切です。
あと従業員さんにわかっていただかなければいけないところは、別にしてさらに周知を徹底する方が良かったと思っています。

今週のPodcastでは
就業規則のヒアリング例として出てきた「本来であれば管理監督者とはならない管理職の方に役職手当を付けて残業代を支給しない」ことのリスクについても詳しくお話ししております。
私どもは就業規則の作成もさせていただいております。
ご依頼いただけましたら嬉しく思いますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

226.「就業規則」のお仕事-人事・労務の豆知識 Podcast

今週はここまでになります。

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