234.社会保険と扶養の関係
今週は、質問箱のコメントから、社会保険と扶養のお話を致しました!
身近なのに、ややこしくて誤解の多いポイントです。
ご質問の内容
ご質問に市川が回答します!
ご質問ありがとうございます。
アルバイトの方の社会保険に関するお話ですね。
社会保険の加入につきまして、基本的な部分からお話をしていきます。
アルバイトの方の社会保険加入について
まずは会社さんにフルタイムで常勤雇用されている方は社会保険加入となりますね。
それと、そのフルタイムの方と比べて4分の3以上の時間等で勤務されている方が、社会保険に加入します。
フルタイムの方は、法定労働時間である1日8時間・週40時間勤務に所定労働時間を設定している会社さんが多いですよね。
このような設定になると、フルタイムの方の4分の3以上=週30時間以上働くことになればアルバイトの方も社会保険に加入すると考えてよいでしょう。
ただし、会社さんの所定労働時間が1日7時間ということもあり、これは社内規定で決めることができます。
そうなると、1日7時間×週5日=週35時間勤務がその会社さんのフルタイムということになりますね。
この場合はフルタイムである週35時間の4分の3以上、週26時間15分以上働いていたらアルバイトの方も社会保険に加入しなければなりません。
そのため、会社さんの規定によっては週30時間未満であっても社会保険に加入しなければならないこともあります。
社会保険の適用拡大について
最近は社会保険の適用拡大が進んでおります。
会社さんによっては、もう少し社会保険加入ができる従業員さんの幅が広くなってきているということですね。
こういった会社さんを「特定適用事業所」として、条件に該当する場合には労働時間がフルタイムの4分の3以上にならなくても、短時間労働者の方について社会保険が適用されることになっております。
会社さんの規模として従業員さんの数が101人以上になり「特定適用事業所」に該当すると、会社さんに「特定適用事業所になりますので、社会保険に入るべき方がいないかどうか確認をしてください」という通知が来ます。(※従業員さんの数え方は上記をご参照ください。)
現在は企業規模について従業員数101人以上ということですが、こちらは段々と適用される範囲が広くなっていくというところです。
ちなみに弊社は特定適用事業所のような取り扱いができるようになるための申し出をしております。
下記のような申し出をすると「任意特定適用事業所」になることができ、従業員さんの数が101人以上いらっしゃらなくても、特定適用事業所のように社会保険の適用を拡大することができます。
特定適用事業所における社会保険加入対象者について
先ほどご説明した「特定適用事業所」や「任意特定適用事業所」になると、労働時間がフルタイムの4分の3未満のパート・アルバイトさんであっても社会保険に加入することになります。
週の所定労働時間が20時間以上、それから学生さんではないことが雇用保険と一緒ですね。
雇用保険は学生さんの場合に、本分が学生さんであるということで、アルバイトでいっぱい働いていたとしてもそれで生活しているわけではないと見なされるため、雇用保険の対象になりません。
ただし、夜間学生さんや休学中で働いている方、卒業証明書があって卒業前に就職して卒業後そのまま働くような場合も、雇用保険が適用されます。
そのため「特定適用事業所」や「任意特定適用事業所」では、いままで雇用保険には加入されていて社会保険には加入されていない方がいらっしゃる場合、その方は社会保険にも加入しなければならなくなると思ってほぼ大丈夫です。
まれに色々と条件が重なると取り扱いが違ったりすることもありますが、基本的にはそのように思っていただければそんなには間違いはないかと思います。
ご質問内容の前半部分 社会保険加入について
ここまでの前提条件をふまえてご質問の件についてお話しします。
アルバイト先の会社さんが「特定適用事業所」や「任意特定適用事業所」であれば、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満であっても社会保険に加入することになります。
仮にそうであった場合に契約内容にもよりますが、まず週の所定労働時間20時間以上というところはもうクリアしていらっしゃる可能性が高いですよね。
ご質問内容に12時間勤務の日が2回ある週もあるとありましたので、それだけで週の実働時間は24時間にはなります。
アルバイト勤務で週3日のうち、例えば12時間勤務が2日と8時間勤務が1日あれば、週30時間は超えてしまうので、そうなれば「特定適用事業所」や「任意特定適用事業所」でなくても社会保険が適用されると思います。
アルバイト先の会社さんが1か月単位の変形労働時間制で、1日の所定労働時間の中に12時間勤務を入れているのか、それとも1日の所定労働時間は8時間でプラス4時間分は残業という形にしてるのか、同じ12時間勤務だとしても所定労働時間の設定はどちらなのでしょうね。
後者の1日の所定労働時間が8時間で週3日と考えると、週の所定労働時間は24時間というカウントでよいと思います。
月のアルバイト代が88,000円以上・学生さんではなくフリータさんである・しばらく雇用の見込みがあるというところから、おそらく他の条件はクリアされていますよね。
アルバイト先の会社さんが「特定適用事業所」や「任意特定適用事業所」に該当するか否か、週の所定労働時間や月の所定労働日数がどのような契約となっているのかで、社会保険適用についての回答は変わってくることになります。
ご質問内容の後半部分 扶養について
ご質問の続きのお話になりますけれども、社会保険適用となると扶養から外れるというお話につきましてはちょっと誤解になるのですよね。
扶養につきましては、①「社会保険の扶養」と②「税法上の扶養控除」で条件がそれぞれ異なります。
①「社会保険の扶養」とは?
まず①「社会保険の扶養」について親御さんの扶養に入れる要件は、娘さんの年収が130万円未満で、かつ、親御さんの年間収入の2分の1未満になる等の場合となります。
つまり、年収130万円以上か、親御さんの年間収入の1/2以上稼いでいれば「社会保険の扶養には入れない」=「抜けなければならない」ということになります。
仮にアルバイトで月12~13万ぐらい稼ぐ場合には、年収の見込みが130万以上になりますよね。
そうなると娘さんがアルバイト先で社会保険に加入しているか否かにかかわらず、①「社会保険の扶養」からは外れます。
そしてアルバイト先の社会保険を加入するか否かによって、お勤め先経由して加入する社会保険(健康保険+国民年金第2号)になるか、直接加入する社会保険(国民健康保険+国民年金第1号)のセットになるかということが決まります。
②「税法上の扶養控除」とは?
次に②「税法上の扶養控除」については、①「社会保険の扶養」とは別物になります。
②「税法上の扶養控除」は、扶養される方についてその年の1月1日~12月31日の給与等の収入額が103万円を超えたか否かで判断します。
基礎控除額48万円と給与所得控除額55万円の合計額が103万円になりますね。
そのためお勤め先から給与が支給されている場合、その年の1月1日~12月31日について年間収入が103万円までならば②「税法上の扶養控除」の対象となります。
例えばその年の途中である9月からアルバイトを始めていたのだとしたら、年間収入が、翌月払いであれば10.11.12の3か月分の給与になりますので、103万円を超えていない可能性もあります。であれば、今年の扶養控除は心配をしなくても大丈夫です。
ただし、来年もお仕事を続けるのであれば給与額によっては扶養控除がなくなりますので、親御さんは今年の年末調整の時に扶養から外しておいたほうがよいと思います。
扶養のお話は非常にややこしいもので、②「税法上の扶養控除」について150万円までは大丈夫だというようなこともよく聞きますよね。
でもこちらの150万円については配偶者特別控除のことですので、配偶者でなければ関係ないというこになります。
ご質問の内容は娘さんだということですので、その年の1月1日から12月31日に103万円を超えているかどうかというところで税金は見ます。
そして先ほどご説明した①「社会保険の扶養」の年間収入については、所得税のように1月1日から12月31日の暦年単位ではなく、事実発生日から1年間についての収入を見るという違いがあります。
そのため社会保険につきましては、社会保険や税金が引かれる前の金額で月11万円程の収入となるかどうかを見た方がよいということになります。
ご質問の最後 休憩時間について
最後に「12時間勤務の日でさえもちゃんとした休憩がほとんどないようでして、ブラックな雰囲気が感じられるのですが・・・」というところのお話になります。
こちらは娘さんがどう思うかで考えられた方がよいのではないでしょうか。
親御さんも娘さんを見ていてすごく心配になるでしょうし、いろいろとおかしいのではないかと思うときはいっぱいあるのだと思います。
雇用契約というものは、労働者であるご本人と会社さんとの間の契約になるので、第三者の方が入ってくると会社さんもご対応ができないのですね。
正直こういったことはありまして、親御さんや奥様からご連絡が来たということは結構多いです。
ご家族の方から「こういうようなことを本人が言っていますが、これっておかしくないですか」と会社の人事の方に伝えても、「ご本人から言っていただけませんでしょうか」としか言いようがないのです。
そのためご本人がそれをおかしいと感じているようでしたら、会社さんに「やっぱり休憩は取れないでしょうか」とご相談をしてみたらよろしいのではないかなと思います。
休憩がほとんどないようだというのも、娘さんがおっしゃっているということですよね。
そのように休憩がほとんどないと他の方に言う時には、本当に休憩が取れないケースの他に、休憩は取れるけれども楽しいから取っていないケースや休憩は取れるけれども取れないような雰囲気だからそれに乗っかっているケースなどもあったりします。
もし休憩が取れるけれどもご本人が取ってないならば、会社さんに「休憩が取れないです」と言ったら「それは取ってください」と言われて終わりになります。
そのため、あまり周りの方々が会社さんへ「これっておかしいんじゃないの?」とか「会社にちゃんと言ったほうがいいんじゃないの」というのは言わない方がよいと思いますよ。
会社さんでどういうことがあってご本人から「うちの会社は休憩が取れないんだよね」という言葉が出てきているのかというのは、わかりませんからね。
それはもう温かい目で見守ってあげていただきたいなというふうには思います。
恵社労士事務所は10月からバラスト社労士法人に名称変更をいたしますので、今後もどうぞよろしくお願いいたします。
業務内容は変わりませんので、労務相談や事務手続き、給与計算など社労士お探しの方はぜひ一度お問い合わせください。
今週はここまでになります。
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