225.世代間の教育の違い

225.世代間の教育の違い-人事・労務の豆知識 Podcast

最近の若者は・・・というのは、大昔から言われていたようですが、今、若者の世代にはどのような教育がされているか、ご存じですか?
また、自分は、どのような教育で育ってきたか、ご存じですか?
年を取ったから頭が固くなったのか、若者は根性がないのか。
そういうのだけではなくて、学校で学んだことが違うので、「これが良い」と思っている価値観が違うのではないかと思うのです。

今回は、そんなことを調べてみました。

※目次の西暦は、小学校の学習指導要領が実施された年を表しております。

教育と人材(人財)の関係について

今週は教育のお話をしようと思います。
このPodcastを聞いてくださっている方からセミナーのお仕事を頂きまして、ありがとうございます。
セミナーのテーマは『人財について』、人材の“材”の字が財産の“財”になっております。
私はこのように“材”→“財”と書くことにずっと違和感がありました。
「仕事」を「志事」にすることもなんていうか、むずがゆくなってしまうタイプです。
ただ最近「人財」に関してはすっきりする回答がありまして、違和感がなくなりました。
それは「財産というものは投資をすると増える。投資をすると価値が高くなるものであるから、人材の“材”の字を財産の“財”にする。」というのを見て、なるほどねと。
セミナーで「人財」のお話をすることになり、人材活用や採用の仕方などについて最近「これは教育だよね」と思ったことが立て続けにあって、これはきっと何かしらのご縁だと思っています。

人材について「これは教育だよね」と思ったきっかけの一つ目は、私の息子が今年の春から小学校1年生になって、授業参観に出たことからでした。
いまの小学校は、もはや私が知っている小学校ではないですよね。
息子が通っている公立の小学校は、最近校舎を新しくしていて素敵な建物で、設備がすごくて。
小学校の授業参観がイベントとしてというより、この日はいつ来てもよいというような学校見学会みたいなかんじでした。
それで私は1回行きましたが、授業内容や先生の雰囲気とかがもう違いますよね。
私の世代はまだ先生がものすごく厳しかったです。
なにかをしたら怒られる・叩かれる・「ばかやろう」って言われるのを経ているので、私は学校の先生=怖い・嫌いで、学校も好きじゃない子でした。
私の中で学校の先生というのは、固い・話は聞かない・融通はきかない、敵というイメージなんです。
だからいまの先生が小学1年生の児童の話を聞いて「うんうんそうだよね、それで他に何か考えましたか?〇〇さん」という受け止めますという姿勢が、もうすでに違う。
これが「教育が変わったなぁ」と思ったきっかけでした。
そのときは正直、その先生がたまたまそういう方だったのかなとも思っていました。

けれども最近になって、出前授業について前々回にお話ししましたよね。(Podcast / ブログ)
社労士会の会務で小学校と中学校へ出前授業に行き、そこでもやはり「昔のイメージの先生」いう方はまだきっといらっしゃるのでしょうけれども、すごく減ったのだろうなという感じがしました。
だからもう、みんながちゃんと発言をするんですよ。
なかには発言しない子もいますが、自分を受け止めてもらえると思っているような子が、昔より増えた感じがして。
これはきっと先生がいろいろと対話をする中で、出てきた意見とかを受け入れて進めているのだろうなと、やはり教育自体が変わったんだろうなと、すごく思ったきっかけがありました。

二つ目は弊所で30代の社員と面談をしているときに、世代によって弊所のイメージが違うと私が感じたことがあって。
やはりその世代での受け止め方や感じ方が違う、出してくる言葉や答えが違うというのは、年齢の積み重ねや経験の問題とかではなくて、これは教育が関係していると思いました。

あとたまたま伺ったセミナーで、講師の先生が「教育の学習指導要領を見たことありますか?」「ある年から学習指導要領がガラっと変わったんですよ」とおっしゃっていて。
私は「そうなんだ、知らなかった」と思いました。
教育関係以外のセミナーで学習指導要領を掛け合わせるなんてあまりしないですよね。
たまに「学習指導要領が変わります」とニュースになる、そうすると上の世代の方から、新しい内容について「そんなことしたら由々しき問題だ」みたいな意見も結構多くて。
物事が変わることって基本的に皆が怖いじゃないですか、だからあまり学習指導要領について見てなかったんですよね。

長くなりましたがこのような経緯で、今回『人財について』ご依頼のセミナーをするにあたり、学習指導要領の年代や内容を一覧表にしてみました。
私は学習指導要領を見て

・年代で学習指導要領の内容がすごく違うこと
・いろいろな方と話していて、世代間の格差と学習指導要領がリンクしているということ

これらに気づいて、教育というのはすごいことなのだなと思いました。
ここからは学習指導要領についてまとめてみましたので、そのお話をさせてください。

学習指導要領の変遷について

1961年~高度経済成長期の学習指導要領

学習指導要領が実施された年や、年齢と時代などについて私がまとめた表をご覧ください。

資料作成:市川 恵

1961年(昭和36年度)から学習指導要領は法的基準性のある告示として実施されました。
それまで学習指導要領はガイドライン(指針)として出されていたようです。
参考ページ: 学習指導要領をめぐる教育裁判―文部科学省HP

『学習指導要領の変遷』より一部引用―文部科学省HP



1961年の10年後、1971年(昭和46年度)に学習指導要領の内容が変わります。
このときは高度経済成長期の時代の進展に対応するため、とても厳しい内容となっていたようです。

『学習指導要領の変遷』より一部引用―文部科学省HP

学習時間や教科数も多くて、土曜日まで学校がありました。
高度経済成長期は家庭のお父さんはガンガン働いていて、お母さんはだいたいがお家にいるような形の中で、子供は良い学校へ進学して良い会社に就職するのが幸せだと、きっと言われていた時代ですよね。
この時に小学校へ入学した子供は現在58歳なので、60歳ぐらいまでの方がこの考え方でいるのではないかと思います。
そして高度経済成長期の1973年に為替レートが日本円は1ドル=360円などだった固定相場制から変動相場制という形へと移行しました。
この影響で円高となって経済が打撃を受けて、高度経済成長が落ち着きました。

1980年~安定成長期の学習指導要領

ここから経済は安定成長期になり、きっと日本はこのまま安定し続けるだろうという楽観的な空気が流れていた1980年(昭和55年度)にまた学習指導要領が変わります。

『学習指導要領の変遷』より一部引用―文部科学省HP

この時に実施されたのが、詰め込みすぎの内容からもう少しゆとりをということで、学習内容が削減されました。
1980年(昭和55年度)に小学校へ入学した方は今49歳なので、その年齢以下の方というのは物凄く詰め込まれた時代をそもそも知らない、というようなことになると思います。
もちろん先生も人間ですから「今回から学習指導要領が変わりましたので、みんなに優しくしてください」といわれてもすぐに変わるわけではありませんよね。
そのため徐々に変わるということではあるのでしょうが、ここから少し学習時間が減ったということになりました。

1992年~バブル崩壊時の学習指導要領

そして1991年(平成3年)にバブル崩壊が来るわけですね。

『学習指導要領の変遷』より一部引用―文部科学省HP

1992年(平成4年度)個性を活かす教育ということで、ゆとり教育というものが始まりました。
この時代を見ると、おそらく学習指導要領が改訂された平成元年ごろはバブル崩壊すると思ってなかったから、もう少しゆとりを持った生活をさせようとしていたところ、実施前の平成3年にバブル崩壊しちゃったということではないかなと、ちょっと思ったりします。
この影響を受けたのは、1980年(昭和55年度)生まれの人が1993年(平成5年度)に中学生になったということですよね。
今 43歳の私の年代ということなります。
個性を活かす教育というのをこのあたりから受け始めて、このままずっと行くかと思いましたが、バブル崩壊しましたのでそういうことを言ってはいられませんよね。

2002年~生きる力をテーマにした学習指導要領

次は2002年(平成14年度)に学習指導要領が変わります。

『学習指導要領の変遷』より一部引用―文部科学省HP

この時のテーマとなるのが[生きる力]ですね。
2002年(平成14年度)実施の学習指導要領は、平成8年中央教育審議会の答申により、[生きる力]について下記の重要な要素が挙げられています。

「いかに社会が変化しようと,自分で課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力」
「自らを律しつつ,他人とともに協調し,他人を思いやる心や感動する心など,豊かな人間性」
「たくましく生きるための健康や体力」
学習指導要領等の改訂の経過 (7) 平成10年の改訂より一部引用・一部編集―文部科学省HP

こちらはバブル崩壊をして10年が経って、これは前のようには戻せないのではないかと、そういった中で考えられた学習指導要領だと思います。
今から考えるとこちらはすごく重要なことです。
テストで点数を取るということが素晴らしいとされていた時代を経て変化し、授業の量を減らしてゆとり教育だといわれていたわけですよね。
それまでは会社がいったことをちゃんとするということが一番よいという時代でしたから。
そのため自分で考え行動して人生を切り開いていくということが必要か?と言われたら、逆に邪魔なのでは?などと言われている可能性もあったわけですよね。
そのような中で、この[生きる力]をスタートさせたということです。
2002年(平成14年度)小学校の教育を受け始めた方は今27歳で、もう社会には出てきています。
今33歳のぐらいの方が当時12歳だったということですね。

そのあと2011年(平成23年度)にまた大きな学習指導要領の実施がありました。
こちらでもテーマは「生きる力」となっています。

『学習指導要領の変遷』より一部引用―文部科学省HP

この時に勉強量をちょっと見直したみたいで、「脱ゆとり教育」といわれているのがこの2011年(平成23年度)の学習指導要領だそうです。

2020年~最新の学習指導要領

そして2020年(令和2年度)が最新の学習指導要領ですね。
こちらでは「主体的・対話的で深い学び」のアクティブ・ラーニングという言葉が出てきました。

『学習指導要領の変遷』より一部引用―文部科学省HP

今回の学習指導要領の考え方としては、新しい時代に必要となる“資質能力の育成”と“学習評価の充実”ということで、「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」というような3つの観点から考えられているということですね。

『学習指導要領の考え方』より引用―文部科学省HP

その中で面白いなぁと思ったのは、上の図・左下の「どのように学ぶか」というところで、生きて働く知識・技能の習得というのが学習指導要領の中にしっかりと入っているということです。

自分がこの教育を受けて何ができるようになるかということを、しっかりと受け取ってほしいということみたいですね。

『新しい学習指導要領 生きる力 学びのその先へ』リーフレットより引用―文部科学省HP

今までにあったものというよりは、今から必要になるものというのを増やしていくということ。
たしかにこのころからタブレットで勉強をしたり、プログラミングの授業などが入ってきましたよね。

『新しい学習指導要領 生きる力 学びのその先へ』リーフレットより引用―文部科学省HP

要は自分で考えて、さらに話し合って考えて掘り下げていくというようなことを小学校からやるということになっているのですよ。
もうこれは我々の世代のイメージの学校とはもう全然違いますよね。
私の中でこういうようなことは、塾でやることでした。
だから自分の子供も学習塾とかに行かせたいなと思っていたぐらいです。
それを学校でするということは、すごい違いですよね。
最近子供が持ってくる宿題とか、もう量がめちゃくちゃ多いです。
なんだか私が小学生のときにやっていた公文式みたいなプリントがあって、子供が「今日はね、数プリやったよ」って、これが学校で宿題として出ているんですよね。
これはすごいなと思いながらいつも子供の宿題を見ているのですが、かなり変わりましたよ。
私たちの世代が塾で得ていた環境が、現在は義務教育の範囲で展開されています。

もう少ししたら、こういう世代も社会に出てきますよね。
将来は仕事ができる方のパーセントが増えていくのではないかと思っています。
ただそうなった時に、私たちがそういう方たちの先輩や上司になるわけですよね。
そのときに先輩や上司として、後輩となるその方に何を提供してもらうかというのを考える方向にシフトしていくのかな、というようなことを資料の表を作りながら考えました。
私たちはどういう教育を受けてきたから、いまの若者に対してこういう感情を持つのだろうか?というふうに受け止めるということも必要なのかなと思いました。

今週のPodcastでは
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今週はここまでになります。

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