224.フレックスタイム制のお悩み

224.フレックスタイム制のお悩み-人事・労務の豆知識 Podcast

今回は、フレックスタイム制についていくつか質問をいただきましたので、フレックスタイム制の使い方を解説しました。

フレックスタイム制とは

今週は質問箱にフレックスタイム制についてのご質問が3つ連続でありました。
このテーマついて、いま聞きたい人がいっぱいいらっしゃるのだろうと思いましたので、フレックスタイム制の基本的なところをご説明させていただきます。

『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P3より引用―厚生労働省HP

労働基準法で労働時間について1日8時間・週 40時間を超えて労働者を働かせると時間外労働(残業)になりますが、これをただちに時間外労働とはしない特例制度のひとつとなります。
それではフレックスタイム制ではどのように労働時間の計算をするのか?というと、清算期間と呼ばれる期間内において総労働時間を計算をします。
実労働時間がこの総労働時間を超えていれば時間外労働になりますし、足りない時間は控除されることになります。

例えば通常の労働時間制度だと、9時~18時など所定労働時間が決まっていたりしますよね。
フレックスタイム制であれば、規定などで定められた範囲内において従業員さんが自由に、この9時や18時という出退勤時間の幅を持たせることができます。
そのため出勤は7時~11時、退勤は16時~20時などと定めておくことで、対象となる従業員さんがご自身の都合に合わせて働くことができるということになります。
対象の従業員さんが自ら決めて、7時に出勤して20時に退勤するような1日8時間を超えての勤務や、11時に出勤して16時に退勤するなど1日8時間に満たない勤務も可能です。
このように清算期間の総労働時間と実労働時間について賃金計算をするのがフレックスタイム制です。

『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P3より引用―厚生労働省HP

1つ目のご質問

イチカワメグミ@恵社労士事務所ーPeing 質問箱

コアタイムがないフレックスタイム制について―市川が回答します!

ご質問ありがとうございます。
こちらの制度設計についてお話しをしますと、そんなに難しいことではないですね。
フレックスタイム制とは、従業員さんが出退勤の時間を選べるという解説をしました。
先ほどの例だと、11時までに出勤して、16時まで勤務していればよいですよね。
言い方を変えると、 11時~16時というのは勤務しなければいけない時間=コアタイムとして設定されています。

コアタイムは設けなくてもよく、朝から晩までフレキシブルタイムとすることも可能です。

要するにいつ出勤や退勤をしてもよい、という時間がずっと続くということになります。
ただし、朝何時から夜何時まで、というのは決めておいた方がよいですね。
勤務が深夜の時間帯に入ってしまうと、その時間は深夜業割増が必要になったりします。
そのため朝5時から夜22時までをすべてフレキシブルタイムとする、というようにしてこの範囲内で勤務はご自由に、いうことは可能です。
このようにご自由に、とした場合には出勤を求めることはできないですね。
この場合はいつ出退勤してもよいので、出勤しなくてもよいということになります。
こういった「完全なフレキシブルタイムにして、いつ来ていつ帰ってもよいということにはしたい。だけど 1日に1回は出勤してもらいたい。」というご相談が稀にありますが、それはできないです。
全部をフレキシブルタイムにしてしまうと、出勤を求めることができず、出勤はしてもしなくてもよいということになります。
ご質問者様がされたいことは、おそらくそちら方だと思いますの、そうすれば可能ということですね。

『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P10より引用―厚生労働省HP

あと気をつけなければならない休日です。
出退勤の時間も日にちも選べますというふうにしたとしても、法定休日は守らないといけません。
法定休日というのは4週4日以上か週 1日以上のどちらかと決まっています。(詳しくはこちらをご覧ください。)
その休日だけはしっかりと設定しないと、結果的に休日なしで働いた場合に法定休日となる日は休日出勤扱いで計算しなければいけなくなりますので結構大変です。
本当に休まないで1日3時間ずつ全部出勤するということもできてしまうと思いますので、そのようにならないよう、休日はしっかりと設計するということが必要かと思います。

それとこういった制度は運用が難しいです。
従業員さんが何名の会社さんなのかがちょっとわかりませんが、従業員さんが数名で意思の疎通ができるような会社さんであれば、よいと思います。
ただ会社さんが大きくなると本当にいろいろな方がいらっしゃいます。
働きすぎてしまう方も出てきて、結果的に残業時間がものすごい数字になるということも考えられるわけですね。
その場合にしっかりと会社さんがハンドリングできるような感じにしておかないと、あとで大変なことになります。
気がついたら残業が100時間以上とかになってしまうような可能性があると思うので、そこは本当に気をつけておいたほうがよいです。
従業員さんがどのくらい働いているのかというのは月末だけ見るのではなくて、日頃から確認しておかないと従業員さんが自由にできる分どうしているのか把握できません。
通常の定時で働く制度よりも管理側の方は大変になりますので、そこはご注意いただければと思います。

『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P5より引用―厚生労働省HP

労働契約とは労働時間の契約になりますので、足りない時間は控除されます。
こういった中で、皆さんが200時間ぐらいでするお仕事を150時間で終わらせた従業員さんがいた場合、その方には50時間分の控除が発生しますよね。
その50時間分は余裕があるのだということを見て、何かしらのお仕事を依頼することや、その方はお出来になるになるわけですから給与を上げるような制度にしないと、どこかしらかで不満が噴出することもあります。
このように運用の管理が結構大変ですので、お気を付けいただければと思います。

2つ目のご質問

イチカワメグミ@恵社労士事務所ーPeing 質問箱

フレックスタイム制と固定残業制の併用について―市川が回答します!

ご質問ありがとうございます。
フレックスタイム制と固定残業代に関しましては、おそらく併用している会社さんの方が多いのではないかと思います。
フレックスタイム制は総労働時間が決まっているわけですよね。
清算期間が1か月の場合に、週40時間の労働時間で暦日数が30日の月だと総労働時間は171.4時間になります。
約171時間は働かなければなりませんが、従業員さんが自由に働くような形になっている場合、全部ご自身で管理しなければいけないです。
管理ができる方はよいですが、大体の方は月末になって「あれ?2時間多い」とか「2時間少ない」とかが出てきてしまう。
フレックスタイム制にすると、こういった辻褄合わせのようなことが発生したりします。
そのため働く時間について少し余裕を持たせておきたいという場合が多いですね。

この余裕については固定残業の時間で10時間や20時間とかですね。
清算期間が1か月の場合に、週40時間の労働時間で暦日数が28日の月だと160時間が総労働時間になります。
固定残業代として20時間分余裕を持たせて、160時間~180時間までの時間で働いてくださいという形で制度設計をしているということは結構あるかと思います。
全く固定残業代がないと、絶対に残業代が発生しますよね。
働いている方も遅刻・早退控除は出したくないですから、無理に残業をしてしまい、結果として残業代が出ます。
そのためある程度「何時間から何時間までで働いてください」としておく方が、大変な思いをしないで済みますのでよいのではないかなと思います。
このように固定残業代を併用をする際の注意点としては、あまり長い時間にならないように気をつけることですね。

あとはフレックスタイム制で少し時間に余裕を持たせたい場合に、先ほどとは逆パターンのことをしている場合もありますね。
例えば月160時間が総労働時間だったとして、月140時間以上働けば控除はしない、としている会社さんもあります。
ただし、その場合に月135時間しか働かなかった場合は、月140時間に対する5時間分の控除ではなく、月160時間に対する25時間分の控除をするという考え方になるケースが多いです。
そのため働いている方が、しっかりと制度を理解していないと後で思ってもいないようなことになるかもしれないので、気をつけた方がよろしいかと思います。
このようにあまり複雑な制度にしてしまうと、うまく意図が伝わらず余計なトラブルになったりしますので、余裕を持たせる固定残業代ぐらいで設計しておいた方がよいのではないかと私は思っています。

3つ目のご質問

イチカワメグミ@恵社労士事務所ーPeing 質問箱

就業場所を労働者に委ねている場合における移動時間の取り扱いについて―市川が回答します!

ご質問ありがとうございます。
前に弊所はご質問内容のような朝一にZoom打ち合わせをしてから出勤してきてもよいとしていたことがありました。
例えば所定労働時間が9時から18時までという会社さんがあったとします。
朝は在宅勤務をして、途中から出勤してくれたらよいとした場合。
通常ならば従業員さんが8時ぐらいに家を出て、9時までに出勤してきますよね。
この場合に会社さんとしては通勤時間がずれるだけという認識で、 8時から9時までが通勤の時間だと考えて、在宅勤務は8時から始めるべきと考えます。
そうすると8時から在宅勤務を始めて、10時まで在宅勤務をしてから家を出る。
10時から11時までを通勤時間として使うので、その時間は当然に無給ですよね。
そして11時から出社して勤務が始まる、というのが会社さんとしての認識です。
けれども従業員さんの中には「9時始業というのはもう決まっているのだから、9時に在宅勤務で仕事をスタートして途中で会社まで移動をしてくる」という方がいらっしゃいます。
こういったときに「これだと1時間中抜けの控除になる」と会社さんが言うと、「ええ、何言ってるんですか?そんなばかな」という感じで従業員さんとトラブルになったというようなお話を聞いたことがあります。

そのため弊所で実施していたときは相当気をつけて、移動時間というのは休憩時間になります、という形にしましたね。
就業場所の移動はその距離によって、10分で来ることができたり、1時間や2時間かかるケースもあり得るわけです。
出勤前に在宅勤務が終わったところでタイムカードを打刻、出勤した後にもタイムカードを打刻してください、という形にしていました。
それで移動時間としての休憩時間が法定の1時間などを超えていなかったら、その分はどこかで休憩するという取り扱いにはしていましたね。
移動時間にプラスしてお食事したりする時間は絶対に必要ですので、休憩時間もある程度は自由にして、ただし法定の休憩時間以上となるようにしてくださいとお話をしていました。

ご質問のケースですと、在宅勤務を会社さんが命じているのであればその途中の移動時間は勤務時間になる可能性もあります。
けれども在宅勤務してもよいと従業員さんに委ねている場合は、ご本人が好きでお家にいたわけですから、その移動時間は休憩時間として差し支えないわけですね。

『テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン』P9より引用―厚生労働省HP

法定の休憩時間が1時間の場合、その方の移動時間が1時間半ぐらいかかっていたとしたらこの時間が法定の休憩時間となりますので、また別に休憩を1時間取得させるというのはしなくてもよいかと思います。
ただし、先ほどもお話ししたように食事時間など生活する上で休憩する時間というのはありますので、1時間半かけて出勤してきた後にタイムカードをわかるように打刻して食事時間などの休憩に入るということは認めてあげた方がよいと思います。
在宅勤務からの会社さんへの移動時間と休憩時間の全体が、法定休憩時間を超えていればよいので、さらにプラスして自動的に1時間休憩をすることになっているとかならば見直した方がよいのではないでしょうか。
そして休憩時間を使って移動している取り扱いならば、打刻をしないというのはだめですね。
就業場所間の移動時間について打刻をすることで、法定の休憩時間分をそこで取得したとして、他からは賃金を引かないというような制度設計にした方がよいと思います。

あと勤怠管理システムをご使用されているかわかりませんが、私が使っているシステムだと休憩時間として打刻した時間が1時間以上になれば賃金を引かれたりとかはしないので、システムがあれば設定を見直した方がよろしいのではないでしょうか。
勤怠について打刻をしないとか、休憩を自動で控除されているから打刻をしない、などというのはやめたほうがよいです。
「就業場所の移動について打刻をした時間と実際の休憩時間が、法定の休憩時間以上になるのならよい」いう内容でお話されるのがよろしいのではないかと思います。

今週のPodcastでは
フレックスタイム制に関連するご質問についておこたえしました!
ご質問は質問箱にて匿名で受け付けておりますのでぜひご投稿ください。

224.フレックスタイム制のお悩み-人事・労務の豆知識 Podcast

今週はここまでになります。

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