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社会保険料の納付ミスにご注意を~実務で見落としがちなケースを2つに分けてご紹介~

会社には社会保険料を適正に納付する義務がありますが、制度や実務面の複雑さから、思わぬ納付ミスが起きることもあります。届出を怠り加入手続きをしないと、「懲役や罰金」「過料」に科される(健康保険法208条、厚生年金保険法105条)だけでなく、従業員の給付や年金に影響が出る可能性もあります。原因は手続き漏れのほか、被保険者の範囲を正しく理解していないことや、報酬に含めるべき手当等の除外など、様々な要素が挙げられます。今回は、実務で見落とされがちなミスの例を2つの視点からご紹介します。

1.資格取得・喪失届の提出漏れ(対象とすべき従業員の範囲)

社会保険は、対象となる従業員が入社した日から加入し、退職した翌日に資格喪失となります。この際に必要な「資格取得届」「資格喪失届」が未提出のままになると、保険料の納付が正しく行われず、また、従業員の医療機関での受診や各種給付にも支障が出るおそれがあります。

【よくあるケース】

・パートタイマーが適用対象であるにもかかわらず、加入させていない。「加入対象はどの範囲か」を正しく判断することが大切ですね。(参考>>日本年金機構サイト 適用事業所と被保険者

・取締役が常勤で報酬を受けているにもかかわらず、「役員だから加入不要」と誤解して届出していない。

<注意したいポイント(その1)>

役員であっても、常勤であったり、労務の対価として報酬を受け取っている場合は、原則として社会保険の被保険者となり得ます。「定期的に出勤しているか?」「役員会への出席はあるか?」「業務指示を出して現場対応を行なっているか?」「報酬の金額はどうか?」 など、様々な要素を総合的にみて判断する必要があります。注意したいですね。

(参考 >>〇法人の代表者または業務執行者の被保険者資格について-S24/7/28保発74号通知


2.算定基礎届・月額変更届の提出内容ミス(何を報酬とみなすか)

昇給や降給、就業形態の変更などによって報酬額が一定以上変わる場合、「算定基礎届(定時決定)」や「月額変更届(随時改定)」を適切に提出することはもちろん、「どの手当や支給分を保険料算定の基礎とする報酬に含めるか」についても、丁寧な確認が欠かせません。 報酬額の届け出において、「何を報酬に含めるのか」の判断を誤ってしまうと、標準報酬月額が実態とずれてしまい、保険料が過少または過大に算出される可能性があります。

【よくあるケース】

・通勤手当などの毎月支給される手当を、報酬に含めず申告している

・社宅や社員食堂の現物支給分を、金銭換算せずに除外している

・「大入り袋」など「臨時的に受ける一時金」について、取り扱いを誤っている(※原則としては、「臨時的なもの」「偶発的な性質のもの」は報酬に該当しないとされています)

<注意したいポイント(その2)>

「大入り袋」は、ページガイド(>>算定基礎届の記入・提出ガイドブック)3ページ目の表のとおり「報酬とならないもの」に区分けされています。

ただし、「臨時的かどうか」は、例えば「毎年支給されていないか?」「時期がある程度決まっていないか?」 などの点も踏まえる必要があります。また、「偶発的な性質のものか」は、「会社からの恩恵的な性質の支給か?」社会通念上の見方も大切です。たとえば、「会社の業績や営業目標達成に繋がっていて」「賃金台帳に記載がある」などのケースは、必ずしも恩恵的とみなされず、報酬に含めて算定すべきとされる可能性もあります。

(参考 >>〇疑似照会回答(厚生年金保険 適用)、8ページ目)


3.まとめ

社会保険料の納付ミスは、従業員の不利益につながる重大なリスクであり、会社にとっても財務上、少なからず影響を及ぼすおそれがあります。制度の基本をきちんと押さえるとともに、「うちは大丈夫」と油断せず、定期的に社内でチェックすること、そして必要に応じて社労士などの専門家による確認を取り入れることが、万が一のトラブルを未然に防ぐ第一歩かもしれません。 東京都杉並区荻窪をオフィスとするバラスト社会保険労務士法人は、10名以上のスタッフが在籍するチームワークの良い事務所です。貴社の課題など、ぜひ1度お気軽にご相談ください。(鵜頭)


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バラスト社会保険労務士法人

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