法定帳簿はきちんと管理できていますか?基礎知識と実務上のメリット

法定帳簿とは?

法定帳簿とは、労働関係法令で事業主に作成・保管が義務付けられている帳簿のことを指します。主に以下の3種類があります。

帳簿の種類主な内容
労働者名簿従業員の氏名・生年月日・履歴・性別・住所
従事する業務、雇入れ日など
賃金台帳氏名・性別、賃金計算期間・労働日数・労働時間数
基本給・各種手当、賃金控除額など
出勤簿(またはタイムカードなど労働時間を記録したもの)氏名、出勤日・始業・終業・休憩時間
残業時間など

適切な管理が必要な理由

法定帳簿は、次のような理由から適正に管理することが求められる重要な帳簿です。

  • 労働基準法に基づく義務
    会社には、労働基準法第107条~109条(およびガイドライン*)に基づき、帳簿の作成し、3年間保存する義務があります。適切に管理されていないと、是正勧告を受けたり、罰則の対象になることもあります。

*ご参考:厚労省「労働時間の適正な把握のためのガイドライン」

  • 労働時間と労働トラブルの防止
    出勤簿や賃金台帳をきちんと整えることで、労働時間を適正に管理しやすくなり、長時間労働や未払い残業代のトラブルを防ぐうえで役立ちます。従業員との信頼関係を築くうえでも大切なポイントと言えそうですね。
  • 会社の信用力アップにつながる
    帳簿が適切に管理されていると、取引先から「しっかりとした会社だな」と評価されやすくなります。また、場合によって金融機関からの信用を得やすくなり、融資審査など際にもプラスになるかもしれませんね。

実務上のメリット

日々の業務の中で、帳簿を適正に管理し上手に活用することで、会社や管理部門の負担を軽減できます。具体的なメリットの例をいくつか見てみましょう。

  • 経理・給与計算の効率化
    正確な賃金台帳があれば、給与計算や社会保険料の算出がスムーズになり、手作業によるミスを防げます。誤った社会保険料や労働保険料を計算してしまわないよう、普段から整備しておくと安心ですね。
  • 行政調査へのスムーズな対応
    万が一、労働基準監督署や年金事務所の調査が入った際は、法定帳簿の提出を求められることがあります。適正に管理していれば、追加・修正作業の手間が減り、慌てることなくスムーズに対応できますね。
  • 助成金・補助金の申請がスムーズに
    各種助成金・補助金の申請時には、賃金台帳や出勤簿の提出を求められることがほとんどです。普段から帳簿をしっかり管理しておけば、必要なときにすぐに書類を準備できて、申請の機会にタイムリーに対応できます。

新たな法定帳簿 「年次有給休暇管理簿」

2019年4月の法改正により、年10日以上の有給休暇を付与される従業員について、「時季を指定して年5日の取得」が義務づけられました。これら改正に伴い、「年次有給休暇管理簿」の作成が新たに必要となっています(労働基準法施行規則第24条の7)。

参考ブログ:年次有給休暇とは?付与日数や取得ルールについて

各従業員の有給休暇の取得日、付与日、日数などを記録することが求められています。このルールは比較的新しいため、対応が遅れていないか今一度チェックしてみてください。

まとめ

法定帳簿の適切な管理は、法律上の義務であるだけでなく、会社の経営安定や負担の軽減にもつながります。帳簿をしっかり整えておくことで、労務管理がスムーズになり、従業員との信頼関係も築きやすくなりますよ。「管理方法が分からない」「帳簿作成が不安」という場合は、社労士などの専門家に相談しながら対応することをおすすめします。 (鵜頭)


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