荻窪のバラスト社会保険労務士法人で勤務しております髙山です。
育児・介護休業法の4月改正が目前に迫っており、人事労務をご担当されている方々はお忙しい毎日を過ごされていることと思います。
2025年はほかにも様々な法令で改正が予定されています。弊所ホームページでも取り上げさせていただいておりますので、ぜひともご覧くださいませ。
 育児・介護休業法の改正について

1.はじめに

さて、人手不足とその対策についてと題したコラムの第4回です。
今回は障害者雇用状況報告についてを中心に取り上げさせていただきます。

第1回はこちら
第2回はこちら
第3回はこちら


2.障害者雇用状況報告について

「障害者雇用状況報告」とは、毎年6月1日現在の障害者の雇用に関する状況を管轄ハローワークに報告することです。
この報告義務は障害者雇用促進法第43条7項に定められています。
報告期限は毎年7月15日までとなっているため、期限内に報告する必要があります。

厚生労働省HP(障害者雇用状況報告書及び記入要領等)

なお、この報告を行わなかった場合や虚偽の報告を行った場合には30万円以下の罰金(障害者雇用促進法第第86条)が科せられることもあるため注意が必要です。

(障害者雇用促進法 
第八十六条 事業主が次の各号のいずれかに該当するときは、三十万円以下の罰金に処する。
一 第四十三条第七項、第五十二条第二項、第七十四条の二第七項又は第七十四条の三第二十項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。)


3.障害者雇用状況報告書の提出義務対象事業主について

障害者雇用状況報告は、一定の規模を有する事業主に対して報告義務が発生します。
一般の民間企業の場合ですと、常時雇用労働者数が「40人以上」の規模を有する場合、障害者雇用状況報告書の提出義務が発生します。
この常時雇用労働者数は支社や営業所などの事業場ごとではなく、企業全体の常時雇用労働者数に基づいて判断されます。

従来どおりならハローワークから対象企業宛に報告書用紙が送られてくるため、今年もそうなるかと思います。届いたら7月15日までに報告書を提出するようにしましょう。

なお、あくまでも報告義務を有するのは常時雇用労働者数が40人以上の事業主となっています。ハローワークから報告書用紙が届かなかったから報告しなかったという事情だけでは罰則の適用を免れることはできない可能性があるため、6月1日の正確な労働者数を計算するようにしましょう。

また、報告書用紙は例年5月下旬から6月上旬にかけて対象事業主宛に送られてくる関係上、報告書が送られてくる時点では提出義務がない(常時雇用労働者数が40人未満)可能性があります。先ほども述べましたとおり、届かなかったからといって油断せず、6月1日時点の正確な常時雇用労働者数を計算するようにしましょう。

そもそも報告書の提出義務があるのかどうか判断がつかない場合は、専門家の助言を受けるか、ハローワークに問い合わせて確認し、罰則の適用を受けることのないようにすることをお勧めします。


4.障害者雇用状況報告書の書き方

障害者雇用状況報告書の記入用紙には記入欄がたくさんあって驚くかと思いますが、必要な情報をひとつひとつ記入していけば問題ありません。落ち着いていきましょう。以下、主な点について解説していきます。

なお、記入用紙には複数の種類がありますが、ここでは様式6号と様式6号(別紙)について取り上げさせていただきます。ほかに様式6号の2~4というものがありますが、これらは法45条の認定(関係会社等の特例)を受けた場合に使用する様式になっています。 報告書用紙の記入に当たっては下記リンクの「障害者雇用状況報告書記入要領(PDF)」をダウンロードしてから臨みましょう。

↓下記リンクからPDFがダウンロードできます
様式6号(PDF)
様式6号(別紙)(PDF)
障害者雇用状況報告書記入要領(PDF)

(様式6号 見本 ※2025年3月時点)


〔雇用保険事業所番号〕
報告書用紙を見ると左上に4桁-6桁-1桁のマス目があります。報告書には何を記入する欄なのか記述がありませんが、報告書記入要領を見れば問題ありません。ここには「雇用保険事業所番号」を記入します。

〔①欄〕
ここには事業の種類、産業分類を記入します。
報告書用紙が郵送されている場合は例年だと番号が「御挨拶」に書かれているためそちらを記入しましょう。

報告書用紙が郵送されていない場合は日本標準産業分類(中分類番号)表を参考に記入しましょう。産業分類には2桁の数字を、事業の種類の上段は表から対応するものを記入すれば問題ありません。事業の種類の下段は具体的な事業の種類を記入します(例:総合スーパー)。

また、労災保険と産業分類を対応させた表というものが厚生労働省から公表されているため、どう記入すればよいか分からない場合はこちらを参考にするか、素直にハローワークに問い合わせるのがよろしいかと思います。

日本標準産業分類(中分類番号)表(PDF)
労災保険率適用事業細目と日本標準産業分類の対応表(PDF)

〔C 事業所別の内訳〕
障害者雇用状況報告書の提出義務は企業全体の常時雇用労働者で判断されることは既に述べたとおりですが、報告書を記入する際には「合計」と「事業所別の内訳」を記入する必要があることに注意が必要です。

〔E 障害者雇用推進者〕
「障害者の雇用の促進及びその雇用の継続を図るために必要な~諸条件の整備を図るための業務」を担当する者として、常時40人以上の労働者を雇用する事業主に「努力義務」としてその選任が課せられているものです。

報告書用紙に記入欄がありますが、あくまでもここはその選任状況を記入する欄になっているため、選任していない場合は空欄となります。
しかし、企業内での障害者雇用の促進等を図る観点から選任するよう努めることとされています。選任していない場合は報告書提出を機に選任してみてはいかがでしょうか。

5.高年齢者雇用状況等報告

ここまで大まかに障害者雇用状況報告について述べてまいりましたが、関連の深いものとして「高年齢者雇用状況等報告」というものがあります。
こちらは障害者雇用状況報告の高年齢者版ともいえるもので、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用に関する状況を管轄ハローワークに報告するものです。提出期限も同じで7月15日までとなっております。同じ時期に報告書を提出する必要があるので、忘れずに対応しましょう。


6.まとめ

障害者雇用状況報告書及び高年齢者雇用状況等報告書の提出期限は7月15日となっておりますが、7月には「年度更新」や「算定基礎届」などのビッグイベントが控えています。報告が必要な場合は速やかに取り組み、7月の負担を少なくするよう努めたほうがよろしいかと思います。

また、年に一回のイベントとしてはほかにも育児・介護休業法の育児休業取得状況公表などもあり、忘れずに対応するだけでも大変なものが幾つもあります。

しっかりと対応する場合には専門家の助言等を得るのが極めて効果的ですので、機会がございましたらぜひとも弊所にお声がけくださいませ。 ここまでお読みいただき誠にありがとうございました。


杉並区荻窪を拠点に企業の成長を支える労務パートナーとして、貴社をサポート致します

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