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【2026年法改正】高年齢労働者の労災対策が努力義務に|令和8年4月施行

令和7年5月14日、「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」が成立・公布されました。本改正により、高年齢労働者の労働災害防止に関する新たな努力義務が創設され、令和8年4月1日から施行されます。

1.改正の概要

 事業者は、高年齢労働者の労働災害防止を図るため、

  • 高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善
  • 作業の管理
  • その他必要な措置

を講ずるよう努めなければならないこととされました。

あわせて、厚生労働大臣は、これらの措置が適切かつ有効に実施されるよう、指針(ガイドライン)を公表し、事業者またはその団体に対して必要な指導・援助等を行うことができるとされています。(労働安全衛生法 第62条の2


2.背景:高年齢労働者の労災リスクの高まり

現在、雇用者全体に占める60歳以上の割合は19.1%(令和6年)、労働災害による死傷者数(休業4日以上)に占める60歳以上の割合は30.0%(令和6年)となっており、高年齢労働者は災害発生率が高く(図表1)、休業が長期化しやすい傾向にあります(図表2)。身体機能の低下等によりリスクが高まる一方、雇用者に占める高年齢労働者が増加していることから、年齢特性に配慮した安全対策の重要性が高まっています。

なお、こうした取組は、高年齢労働者だけを対象としたものではありません。

作業環境の見直しや業務の進め方の工夫は、体力に不安のある方や経験の浅い方を含め、すべての労働者が安全に働くための土台づくりにもつながります。

図表1:厚生労働省「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会報告書(本文)p31」

図表2:厚生労働省「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会報告書(本文)p32」


3.エイジフレンドリーガイドラインとは

厚生労働省は、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(通称:エイジフレンドリーガイドライン)を公表しています。「エイジフレンドリー」とは、高年齢者の特性を考慮したという意味で、WHOや欧米の労働安全衛生分野でも用いられている考え方です。

【事業者に求められる主な取組】

① 安全衛生管理体制の確立

  • 経営トップによる安全衛生方針の表明
  • 担当組織・担当者の明確化
  • 高年齢労働者の特性を踏まえたリスクアセスメントの実施

② 職場環境の改善

  • 照度の確保、段差の解消、補助機器の導入などの設備面(ハード面)対策
  • 勤務形態の工夫、ゆとりのある作業スピード設定などの作業管理(ソフト面)対策

③ 健康・体力状況の把握

  • 健康診断や体力チェックによる客観的な把握
  • 事業者と高年齢労働者双方による状況の共有

④ 健康・体力状況に応じた対応

  • 個々の状況に応じた業務内容のマッチング
  • 身体機能の維持・向上に向けた取組の実施

⑤ 安全衛生教育の充実

  • 写真・図・映像等を活用した分かりやすい教育
  • 再雇用・再就職等で未経験の業務に従事する高年齢労働者への丁寧な教育

4.高年齢者とは

実は、本改正法においては「高年齢労働者」及び「高年齢者」の年齢的な定義は明確に規定されていません。
なお、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(通称:高年齢者雇用安定法)」においては「高年齢者」を55歳以上と定義しており、本改正の実務的な対象範囲を考える上での一つの参考指標と位置づけることができるでしょう。

厚生労働省「職場のあんぜんサイト 「高年齢労働者」


5.法改正を踏まえた実務対応のポイント

本改正は努力義務ではありますが、国が指針を示したうえで法律上明確に位置づけたことから、これまで以上に実務対応が求められる内容といえます。高年齢労働者の安全対策については、従前からガイドライン等で示されてきましたが、今回の改正により、対応を一段階引き上げ、取組の推進を図る趣旨が明確になったと考えられます。特に、高年齢労働者の在籍割合が高い事業場や、現場作業・身体的負荷のある業務がある事業場、再雇用制度を導入している企業では、安全衛生体制や現場運用の見直しを早めに検討することが重要です。

当事務所では、ガイドラインを踏まえた対応内容の整理、就業規則・安全衛生体制との整合性確認、事業場の実情に応じた運用設計などについてサポートを行っております。

法改正対応に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。


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合田 真梨菜

執筆

合田 真梨菜

高崎経済大学地域政策研究科前期博士課程を修了。企業と労働者の双方の視点から働くことに関わる仕事を志す。日本語教師として外国人労働者・留学生の支援を行う中で、必要なのは言葉だけでないと痛感し、2021年にバラスト社会保険労務士法人(旧:恵社労士事務所)に入社。現在は、企業のパートナーとして、日常的な労務相談に加え、法改正等の情報発信を通じて、誠実かつ実直な姿勢でサポートしている。

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