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有給休暇取得率と労働時間の最新の動向
令和5年度就労条件総合調査の結果:有給休暇取得率の改善
厚生労働省では毎年「就労条件総合調査」を実施しています。最近、令和5年の調査結果がまとめられ、10月31日に公表されました。この調査の目的は、日本の民間企業における就労条件の現状を明らかにすることです。対象は常用労働者30人以上の民営企業で、6,421社が抽出され、令和5年1月1日現在の状況を基に1月に調査が行われました。その結果、3,768社から有効回答を得ました。
厚生労働省は毎年、社会の変化を調査しています。特に今年は、有給休暇の取得状況が大きく改善され、昭和59年以来の最高の取得率が記録された点が注目されています。厚生労働省には「年次有給休暇取得促進特設サイト」というページがあり、そこでは有給休暇を取らない理由が掲載されています。最も多い理由は、約三分の二の労働者が有給休暇の取得にためらいを感じていることです。このデータは平成26年のアンケートを元にしているため、やや古い情報かもしれません。ためらいの理由としては、「周囲に迷惑がかかると感じる」「後で多忙になる」「職場の雰囲気で取得しづらい」「上司が好意的でない」「評価や査定に悪影響がある」といった点が挙げられています。多くの人が「周囲に迷惑がかかるから」という理由で有給休暇の取得に消極的であることが分かります。
今回の統計によると、年次有給休暇の取得率が過去最高を記録しました。具体的には、取得率が62.1%に達し、これは昭和59年以降で最も高い数値です。昨年の取得率は58.3%でした。産業別に見ると、複合サービス事業が74.8%で最も高く、宿泊業・飲食サービス業が49.1%で最も低い数値を示しています。これは、宿泊業や飲食サービス業など、休暇が取りにくいイメージのある業界でも改善が見られることを意味しています。
有給休暇の取得率の推移を見ると、平成17年と19年が最低で、46.6%でした。過去には一度、56.1%という高い取得率を記録していましたが、その後バブル崩壊とともに下降し、最低点に達しました。その後、徐々に回復し、働き方改革により急速に上昇しました。平成31年には52.4%、翌年の令和2年には56.6%となり、昨年は58.3%、そして今年は62.1%と過去最高を更新しました。この結果は、法律による年次有給休暇の取得促進が効果を発揮していることを示しています。
有給休暇の取得率の算定方法については、付与された日数と実際に取得された日数を基に平均の取得率を計算しています。全体的には、完全に休暇を取らない人もいれば、全日数を取得する人もいますが、実際には5日の取得が義務付けられているため、0日である人は少ないでしょう。
有給休暇の取得に対する従業員の抵抗と計画付与制度の普及
私たちが実務で感じているのは、会社にはどうしても有給休暇を取りたがらない人が一定数存在するということです。10人いると、おおよそ1人は有給休暇に対して罪悪感を感じたり、休むことが仕事に対する姿勢として良くないと考える傾向があります。これにより、なかなか休暇を取ってもらえないことがあります。このような状況の中、会社としては無理やりでも有給休暇を取らせる義務が生じ、人事部はこの問題に頭を悩ませています。
法改正をきっかけに、「計画付与」という制度が広まってきたと思います。この制度では、年次有給休暇を10日以上付与される人は、そのうち5日は自由に使うことができますが、残りは会社が指定する日に取得することが可能です。労使協定などの手続きが必要ですが、この制度を導入する企業が増えています。計画的付与制度を採用している企業の割合は43.9%で、付与される日数は5~6日程度です。昨年は43.1%だったので、わずかながら増加傾向にあります。
実際には、5日間の有給休暇を取得するのが難しい人もいるため、計画的付与制度を取り入れる企業が増えています。例えば、全社を一斉に休業し、その日を有給休暇とするなど、休暇取得を促進するための工夫をしている企業も見られます。休みが徐々に浸透していく過程を見ていると、これらの対策が効果を発揮しているように感じます。
所定労働時間の平均と週休二日制の普及
今回の調査結果では、有給休暇の取得が主な焦点でしたが、他にも興味深いポイントがありました。特に、所定労働時間の平均についてのデータが注目に値します。所定労働時間とは、企業が従業員と契約する労働時間で、法定労働時間を超えなければ企業が自由に決めることができます。法律では、一日八時間、週40時間が基準となっています。一般的に、9時から18時まで週五日働く契約は一日八時間、週40時間に相当します。しかし、一日七時間で契約している企業も存在するため、企業の平均労働時間は一日七時間48分となっています。これは昨年と変わらない数値です。労働者一人当たりの平均も七時間47分で、八時間勤務の企業が多いものの、七時間や七時間半を基準とする企業もあるようです。週所定労働時間の企業平均は39時間20分です。
産業別に見ると、金融業・保険業が38時間2分で最も短く、一方で宿泊業・飲食サービス業及び生活関連サービス業・娯楽業が39時間35分で最も長い労働時間を示しています。先に触れた有給休暇の取得率が伸びている一方で、宿泊業・飲食サービス業はやや低い数値を示していました。この業界では、従業員が直接業務を行う必要があるため、労働時間を減らすのが難しいのではないかと考えられます。
さらに、週休二日制の採用率に関しても注目すべき点があります。現在、週休二日制を採用している企業の割合は85.4%で、令和4年時点では83.5%でしたので、この割合は着実に増加しています。完全週休二日制(例えば土曜と日曜が休み、あるいは日曜と水曜が休みなど、週に2日間は必ず休むシステム)を採用している企業は、53.3%です。これは昨年の48.7%からの増加です。
年間休日数についても増加傾向にあります。労働基準法では、最低限週1日の休日が必要で、年間では53日が最低基準です。週休二日制の場合は、最低105日以上が必要とされています。土日祝日が休みの場合、年間約120日の休日になることが一般的ですが、祝日が土曜日と重なるなどの理由で、これが厳密には異なる場合があります。現在の年間休日の平均は109日で、令和4年の調査では107日でした。つまり、平均休日数は約3日増加しています。
このデータから分かるように、最近の傾向として、休日や休暇を増やしつつ、労働日数を減らし、効率化を図る動きが進んでいることが明らかです。これらの変化は、労働環境の改善に向けた努力の結果と言えるでしょう。