従業員の賃上げや設備・物品の購入を考えているなら、【業務改善助成金】の活用を検討しよう!(1/2)

私たち社労士が、お客様の投資計画を事前に把握するのは難しく、「助成金、申請できたの?もう買っちゃったよ…」という残念なケースも少なくありません。せっかく条件を満たしていても、タイミングを逃してしまえば受給はできません。
そこで今回は、“もったいない”を防ぐために、「業務改善助成金(令和7年度)」について2回に分けて分かりやすく解説します。第1回では、助成金の概要と、対象となる物品や設備について詳しくご紹介。企業の皆さまが日頃感じている疑問に寄り添う内容です。
痒いところに手が届く、実務に役立つブログとして、ぜひご一読ください。
1.業務改善助成金(令和7年度)とは
生産性の向上や業務効率化につながる設備投資等を行い、事業場内で最も低い賃金を30円以上引き上げると、その設備投資費用の一部が助成される制度です。
2.申請に必要な2つの要件
①事業場内最低賃金を30円以上引き上げる予定があること
②生産性向上に資する設備投資を行う予定があること
要件①:事業場内最低賃金の引き上げ
事業場内最低賃金 とは、事業場で最も低い時間給を指します。
現在の事業場内最低賃金が「地域別最低賃金+50円以内」の企業が対象 です。
(例:東京都の場合、事業場内最低賃金が1,163円~1,213円の範囲内であれば対象)
まずは、貴社の事業場内最低賃金を確認しましょう。以下のリンクを活用してください。
最低賃金の確認方法 はこちら
都道府県ごとの地域別最低賃金額 厚生労働省リンク
要件②:生産性向上に資する設備投資
以下のような例が助成対象となります。
- POSレジ導入による在庫管理の効率化
- リフト付き送迎車導入による送迎時間の短縮
- 専門家による業務フロー見直しによる回転率改善
- 店舗改装による配膳時間の短縮
以下は、厚生労働省のQ&A等を基にした「助成対象となる設備投資」の具体例や考え方です。
■ 助成対象となる設備投資の基本条件
「生産性の向上」や「労働能率の改善」に資することが認められる設備投資であることが必要です。ここでの“生産性の向上”には、売上増加や収益改善も含まれます。
※具体的な対象設備は、交付要領別紙3に記載されています。
交付要領別紙3 はこちら ※詳細はp13~14
■ 助成対象経費の金額基準
- 助成対象となる経費の下限額は税抜10万円です。
- 単体では10万円未満の設備であっても、複数を組み合わせた合計が10万円以上(税抜)であれば対象となります。
■ 対象となる設備投資の具体例
- 老朽化・破損した既存設備の更新
より高性能な機器に置き換えることで、生産性向上が見込まれる場合。 - 作業量の増加に対応するための設備の増設
現行設備のみでは対応困難な作業量に対応する目的での設備追加。 - 外注作業の内製化に伴う設備導入
従来外注していた工程を自社で対応できるようにすることで、業務全体の生産性が向上するケース。 - 事業主専用の設備でも対象となる場合
労働者と同様に事業主も機械設備を使用し、生産性向上が期待できる場合。
■ 自動車の導入について(留意点)
- 対象となる自動車は「特殊用途自動車」で、ナンバープレートの車種コードが「8」から始まる車両(例:福祉車両等)です。
- 自動車本体以外で助成対象となる費用は、検査登録(届出)手続きの代行費用、車庫証明手続きの代行費用、納車費用などです。
■ 厚労省Q&A【問41】(店舗改装)の具体的事例
Q:作業場の無駄な動きを削減し、又は解消するためのレイアウト変更や来客感知システム等の導入等を行います。どのようなものであれば助成対象となりますか?
A:以下のような設備導入・改修が助成対象となる可能性があります。
- 飲食店における以下のような改修
・調理場の改修
・料理を一時的に置く棚の設置
・ホール側から料理を取れる配膳カウンターへの改修
・洗い場に隣接した一時保管棚の設置 - オフィスにおける以下のようなシステム導入
・1階が資材置場、2階が事務所という構造の事業場で、事務員が2階に常駐していても対応可能な来客感知システム(インターホン・カメラ・モニター一体型)の設置 - ⇒上記改修・システムの導入共に 労働者の移動時間削減により、生産性向上と判断される場合は助成対象になります。
5.まとめ
「生産性向上や労働能率の改善につながる設備投資等」に、まさか「店舗の改装」まで含まれるとは思わなかった、という方も多いのではないでしょうか。助成金のチラシだけでは分かりづらく、厚生労働省のQ&Aまで読まなければ詳細が見えてこないのが実情です。
第2回では、業務改善助成金の助成率や助成額についてご紹介いたします。
次回のブログもぜひご覧ください。
杉並区荻窪を拠点に企業の成長を支える労務パートナーとして、貴社をサポート致します!

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執筆
平野 麻希子
明治大学卒業、IT健康保険組合にて健康保険の運営に携わる。人を雇用する事に興味を持ち、社会保険労務士となる。2011年千葉県野田市にて平野麻希子社会保険労務士事務所開業。2024年バラスト社会保険労務士法人に参画。流山事業所所長。中小企業のサポート経験を活かし、助成金や社会保険の寄り添ったサポートを得意としている。